ろこもこゆーすふる〜美術部の日々〜

  第10話 文化系の見解(仮)



new→《当台本を利用してくださってる方へ》




垣本 ゆりえ(かきもとゆりえ)女 高校3年生
明るく元気なスポーツ系天然娘。
中学時代は陸上部のキャプテンとして県内の大会を総なめにするほどの実力があったが
ひょんなことから美術部に入部したらしい。
朗には特に信頼されている。


大辰 咲乃(おおたつさくの)女 高校1年生
今年の新入生。
どちらかというと内気でおっとりしており、背が小さい。
割と毒舌(正直)。いや、もしかすると腹黒?スイッチがオンオフする。
第1話で入部を決めた。


赤星 寛子(あかぼしひろこ)女 高校3年生
美術部部長。基本的には、真面目な姉さん気質。
某有名芸術大学を目指し勉学に奮闘中。
絵は天才的に上手いといえばそうだが、色彩センスだけは素人が見てもまるでない。
ゆりえ曰く、抹茶色に赤紫を合わせてしまうほど。


己ノ瀬 來(みのせらい)女 高校2年生
本校一の美人。
色沙汰でいつも何かしら悩みを抱えている。そのため部では絵を描きながらストレス発散をしている。
普段はクール(気だるい感じ)だが、感情が高ぶると部内限定で甘えん坊になる。
しかし、考えていることが常に斜め上ではある。


新垣 博哉(にいがきひろや)男 高校2年生
次期部長候補。見た目は爽やかな真面目な青年。
恐らく部で一番の常識人。しかし、女性陣の勢いに毎度負けている。
さらに、泉のテンションについていけず若干苦手意識がある。


喜戸 泉(きどいずみ)男 高校1年生
今年の新入生。パワフルで熱い青年。
本人は至って真剣なのだが、よく周りには変人扱いされる。
実はそれには彼の趣味に問題があるかららしい。
その趣味とは、被服(衣装デザイン)である。
理由が不可解だが、彼も第1話で入部を決めた。


奥 要(おくかなめ)男 27〜29歳くらい 教師
美術教師で美術部の顧問。
普段は涼しげな顔をしていて何を考えているのか分からないが
中身は完全なる熱血教師。
そして、話し出すと意外とおしゃべりで本人無自覚であるがナルシストでもある。
ちなみにボケもツッコミもでき、スルースキルが高い。


右京 朗(うきょうほがら)男 高校2年生
童顔で実年齢よりも幼く見られ、男扱いしてもらえないのが悩みの青年。
そのため、自分=女というキーワードにやたら敏感。
男らしく振舞おうとしているが、微かに小心者の要素が見え隠れしている。
一度退部していたが、第3話で踏ん切りがつき再入部を果たした。
ゆりえを尊敬しているが、泉に少々厳しい。






4:4:0若しくは3:4:1台本(所要時間約15分)

<キャスト>
垣本 ゆりえ     (♀):
赤星 寛子      (♀):
己ノ瀬 來       (♀):
大辰咲乃       (♀):
新垣 博哉      (♂):
喜戸 泉        (♂):
奥 要         (♂):
右京 朗     (♂or不):














<前回までのあらすじ>

朗ナレ 「少人数ながらも精力的に活動を続ける僕たち美術部。
     文化祭ではとある先生に女装させられるというアクシデント?もありましたが、いつも楽しく過ごしています。
     前回は、僕も知らないゆりえ先輩の過去を振り返るお話でした。やっぱり、笑顔を絶やさないのってああいった苦労があったからなのかなぁ。
     ところ変わって今回の話は、夏休み明けの部室からです。さてさて、新学期早々何が起こるのやら」






◆美術部室 お昼過ぎ

咲乃 「あの、もしかして……その、走るんですか?」
博哉 「そうだね。部活動対抗戦だからっていうのもあるんだけど、うちの部は人数少ないから全員、もしくは最低一人は2回参加することになると思う」
咲乃 「ああ……」
寛子 「……ということで、皆が体力に自信がどちらかと言えばない……?というのはよく分かってるんだけど、例年通り美術部も『部活動紹介』に参加することになりました」
「嫌だぁー」
博哉 「……」
咲乃 「(ため息)」
ゆりえ 「(嫌だという台詞にかぶせて)わぁーい!」
「……ふむ。あ!ちょっと待ってください!」
寛子 「どうしたの?」
「部活動紹介っておかしくないですか!?紹介するだけなんですよね?」
寛子 「あ、ああ。確かに」
「よく分かんないけど、部活動紹介っていう種目名なんだよなぁ」
「なぁるほどー。で、競技は何をするんですか?」
寛子 「部活動紹介と、バトンリレーと、障害物競走」
「お、多くないですか!?」
咲乃 「(落ち込んだ様子で)走るんだ……走るんだ……」
ゆりえ 「あっ、咲乃ちゃーん大丈夫ー?」
咲乃 「た、多分大丈夫です……」
博哉 「うーん、確かに部活動対抗戦を2回戦もやっても、たがか知れてるっていうか」
「いったい僕たちを何部だと思って参加させてるのか!」
「そっりゃあ、まごうことなき美術部ですね!!」
「わかってるよ!」
「はっ、はい!」
「……あー、やだなぁ。この時期、私はいつも白いテントの下なのよねぇ」
「おおおお、先輩は日差しにお弱いのですか?さすが、か弱い女性の方だ!」
博哉 「いや、己ノ瀬[みのせ]、今年は参加しろよ」
「えー」
博哉 「えーじゃない。俺だって走るのを好き好んで参加している訳じゃないんだ」
「知ってるけど、走るのも嫌だけど、せっかく保ってきたこの白い肌が、黒くなっちゃうのって嫌じゃない?」
博哉 「嫌かもしれないけどなぁ」
「日に当たりすぎると、何も手につかなくなるし、食べると気分悪くなるし」
博哉己ノ瀬[みのせ]……」
「なあ、[らい]に何言ってもしょうがないよ。僕らは僕らなりにやるしかないって」
博哉 「……うーん。でもな」
寛子 「(手をたたく)はーい。そこ口喧嘩始めないで。部活動対抗どころか体育祭で走るのは、私も嫌で嫌でしょうがないの!
    楽しいのは部活動紹介で完成した絵を持ってトラックを周る時だけだし。[らい]は病気持ちらしいから無理はさせないけど、皆嫌なのは同じよ」

――静まり返る部室

咲乃 「……あの、その、私……頑張ります。足遅いけど、皆に迷惑かけてしまいますけど、自分なりに頑張ってみます」
ゆりえ 「咲乃ちゃん!その調子だよ〜!足が遅いなんて関係ないよぉ」
寛子 「そうよ。私だって足遅いし、きっとこの中で活躍できるのは、ゆりえだけかもしれない。それでもやるの」
「……」
ゆりえ 「もしね、[らい]ちゃんが参加できないなら、私が來ちゃんの分も頑張るよ。去年だってアンカーやったし、だいじょぶだいじょぶ!」
「………わかりました。調子が良かったら」
寛子 「うん!」
ゆりえ 「おおおっ!」
「いやぁ、頑張る女性はなんて輝かしいんだぁぁ!!感動で涙が……涙がぁ!」
「いきなり切り替えるなよ」
「ありゃ!」
寛子 「さ、博哉も大丈夫?」
博哉 「は、はい……」
寛子 「誰かが欠けるようなことがあれば、皆で協力する。それでいい?」
寛子以外部員 「はい」
寛子 「よし。問題なさそうね。ちなみに今年のルールで追加されたことがあるんだけど、あー……嫌な顔しないで。違うよ
    そんな嫌な話じゃなくって、今年は顧問の先生がバトンリレーのアンカーを務めることになったの」
「お、おおおおおぉぉぉ!!救世主現るじゃないですかぁぁ!!」
ゆりえ 「要も走るんだぁ!ちょっと白熱だねえー」
「なんだか面白そうなことになってきましたねー!アンカーの時は盛大に盛り上げないといけないですねー!!
   まずは服装からですかねー!いやいやいや、楽しくなってきましたよー!!」
ゆりえ 「喜戸っち良いテンションだぁ」
寛子 「……鶴の一声並ね」
博哉 「え、要先生も走るってことは」
「結構いい線いくんじゃないのかな」
咲乃 「そ、それはすごいです……」
「要って足速そうだもんね。それなら、ちょっといいかも……」
寛子 「(軽く笑って)じゃあ、來、言い訳せずに参加できる?」
「え?」
寛子 「あ、嫌なら私たちが頑張るだけだからいいよ?」
「……やり、ます。………お願いします」

――部室のドアが開く

「よく言った」
部員來以外全員 「要(先生)!」
「……かっ、要!いつから聞い……て」
「おう、お疲れさん。そんなに聞いてないぞ[らい]、文化祭にしても、体育祭にしても、結局皆で参加するから意味があるんじゃないのか。
   去年テントの下でずっと体育祭を見ていて楽しかったか?どうだ?面白くなんてなかったんじゃないのか?」
「う……」
「なあ、そうだろ」
「はい……」
「そもそも美術部の中だって、得手不得手があるはずだ。人物画が苦手なやつが無理矢理、人物画を任されても困るだろ。
   それでも描くのはなぜだ。好きだからこそ描いている、もしくは目的があるから描いているというのが理由だろう。
   では、体育祭という行事は何なのか?とも思うかもしれない。一つは健康、もう一つは人との連帯、コミュニケーション。生きる基本だ。
   怪我しているとか、体調不良なら言ってこい、自分なりに参加してみろ。不完全燃焼だと気分が悪いぞ」
「……そうですよね」
ゆりえ 「來ちゃん、具合悪かったらいつでも言ってよ!お姉さんにどーんと任せて!」
「炎天下の中、日焼けが気になるようでしたら、俺に言ってください!実は肌に優しい日焼け止めを知ってるんです、ふふふふ!
   しかも日焼けしにくい!よろしければ、日焼けの火照りに最適な化粧水もご紹介しちゃいますよ!」
博哉 「喜戸の専門はファッションだけじゃなかったんだなぁ……。テレビショッピングに出ていてもなんら不自然じゃない」
「むしろ、女の子に持てはやされる美容のリーダーみたいなのになりそうで怖い」
博哉 「あー。なくはないな」
咲乃 「……それ、後で私に横流ししてくださいね」
「あっ!日焼け止めですか?お安い御用ですよ〜喜んで!」
咲乃 「もちろん化粧水もお願いします」
「はぁい!」
博哉 「………お、大辰[おおたつ]さん」
「――まぁ、赤星は頑張ったな。文化祭が終わってまた一段と成長したように思える」
寛子 「先生……。あ、ありがとうございます」
「集団のトップに立つってことはそれだけ苦難が付き物だからな。おまえは負けるなよ?――さて、どこまで決めてるんだ?」
寛子 「えっと、部活動紹介の絵は決めているんですけど、リレーと障害物競走の順番はまだ……」
「では、こうしようか。これから発表するコンテストの結果から決めるというのは」
ゆりえ 「コンテスト…?なんだろ?」
「あ?おまえにも夏休み中に提出してくれって言っただろ」
ゆりえ 「ほえ?」
「色鉛筆絵画コンテストですよ。あの、ポストカードサイズくらいの」
ゆりえ 「うーん。……あっ!絵本のやつ?それなら出した記憶が〜」
「そうだな、おまえはそういう作品を出してくれたはずだ。……それでだ、そのコンテストの結果が俺に届いている。
   今から賞を取った者を順々に言うから最初に名前が挙がった者から1走、2走と決めていこう。
   ちなみにまだこの封筒の中身は目を通していないからな。楽しみだ」
ゆりえ 「ほえ〜わくわくする!」
「こういうコンテストってそんなに簡単に入賞するんだっけ?」
博哉 「どうだろうなぁ、こういうのって何が当たるか分からないタイプのコンテストだから、審査員次第では大量入賞もあるかもしれないぞ」
寛子 「博哉、結構自信があるみたいなこと言うのね」
博哉 「いや、そんなことはないですよ。なんとなく!なんとなくですよ」
「じゃあ入賞逃したら、また逸華先生の女性的ファッションショーのモデルに――」
博哉 「ならないから」
「いやぁ、新垣先輩、そして朗先輩の入賞を逃がすのを期待してしまいそうなところですが!」
「おい喜戸!」
「ははははっ!軽いジョークなんですよぉ!ささっ、要先生、結果を!」
「あ、ああ。(封筒から入賞者一覧を取り出す)――えーと、まずは大辰[おおたつ]咲乃、入選」
咲乃 「…えっ!」
ゆりえ 「やたぁ!入ってたね〜」
咲乃 「(照れて)は、はい……。入ってました」
「次に、右京[ほがら]、入選」
「おおっ」
博哉 「だろ?」
「そして……。ん?(気が乗らなさそうに)喜戸[きど]泉、佳作」
「おおおおおおおっ!!来ました!来ちゃいましたよ!この喜戸泉、ドがつく素人であるにも関わらずに佳作を頂いてしまいましたよー!
   もしかして、ファッションの道から美術という新たな門扉[もんぴ]が開かれましたかぁぁぁ!!これはもはや美術界に必要とされているとしか到底――って褒めてくださいよ!」
「あー……、おめでとう」
「へっへー!ありがとうございます!」
「えー、それから、新垣[にいがき]博哉、準特選上位20名」
博哉 「……えっ」
「やりましたねえ!!」
「やったな!」
咲乃 「準特選って、先輩すごいですよ……!お、おめでとうございます!」
ゆりえ 「博哉すごーい!」
寛子 「博哉、おめでとう!ほら、皆に応えてあげて」
博哉 「あ……。まさか賞をとれるなんて思わなかったから……。うーん」
「照れてるの?素直に喜べばいいのにー」
博哉 「ははは、それ、そっくりそのまま己ノ瀬[みのせ]に返すけど」
「博哉は今回結構良いのが描けていたからな。そこが目に留まったんだろう。えー、そして、垣本ゆりえ――」
ゆりえ 「ほわー!何賞?」
「ちょっと落ち着け、今言う」
ゆりえ 「はぁい」
「垣本は、優秀賞上位5名に入った。おめでとう」
「ん?……ゆ、優秀賞ですと!!」
ゆりえ 「ほえええええ!!」
「すごいじゃないですか!」
寛子 「ゆりえ、おめでとう」
博哉 「おめでとうございます」
ゆりえ 「私でも何がなんだかぁ〜。びっくりだよぉ!」
「確かテーマは家族でしたよね。ゆりえ先輩の絵はテーマが誰よりも分かりやすかったと思います。きっとそのせいかも」
咲乃 「な、なるほど。テーマが分かりやすいって重要ですよね」
「そうだな。明白性も重要だ。――以上で入賞者の発表を終わる」
「……あれ!?ちょっと待ってください!」
「ん?」
「ひょっとして入賞者足りなくありませんか!?」
「だって、私、要にコンテストの絵提出してないからね〜」
「ぬぁんという!」
博哉 「いや、己ノ瀬[みのせ]だけじゃないな……」
咲乃 「え、もしかして……部長が……。あっ」
寛子 「呼ばれなかったってことは、落選よ。いいよこういうのは慣れてる」
ゆりえ 「寛子〜、落ち込まないで?」
「まだ……、まだコンテストはあります。そっちで見返せばいいんです!」
寛子 「うん、うん。大丈夫」
「……すまんな。こういう結果になってしまって」
寛子 「仕方ないんです。落選は入賞とともに何度もしてますし、美大の試験の前にもあるじゃないですか。
     ……だから、私はそれで入賞、いえ、上位を目指します」
「そうか」
寛子 「賞を取ることも大切ですけど、今日は体育祭のことを考えないと。順番はこの発表順でいいですね」
博哉 「ということは大辰さん、右京、喜戸、俺、ゆりえ先輩と来て……己ノ瀬[みのせ]と部長はどうします?」
「え、バトンリレーと障害物競走ってどっちも参加しないといけないんですか」
寛子 「あ、ごめんね。アンカーの要先生を除いて、リレー4名、障害物走4名だからそれぞれに分かれないといけないのよ」
ゆりえ 「えーと、1、2、3……。あっ、私2回とも出るよぉ!一人足りなくなっちゃうし」
寛子 「ゆりえ、有難う。助かるよ!」
「順番は決まったし、あとは本番がどうなるかだなぁ」
「俺は鈍った身体を鍛えるために早起きして走りますよーぅ!文化系だからといって体育系にも容赦しないです!ははははっ!」
「まじか、僕も鍛えてみるかなぁ」
博哉 「体育祭でそこまでしなくてもいいだろ」
「ええ!?そんなこともないでしょうに!」
咲乃 「……私も体力に自信がないので練習しようかと思ったんですけど、えと、駄目でしょうか?」
博哉 「え、ああ、駄目ではないけど……」
「めんどくさいかも……」
「……おまえら、思いのほかやる気がないな。全身で走るとすっきりすると思うんだがな」
寛子 「あ、じゃあ、体力づくりは個人で自分なりにしてもらうとして、バトンリレーはバトンの受け渡しが重要だから、そこは部活の時間に練習しない?
    その辺りはゆりえと要先生は詳しいと思うし」
ゆりえ 「皆、任せて!一番は走るのを楽しむことからだよぉ」
咲乃 「は、はい」
博哉 「わかりました」
「楽しむことから。そうですよね」
「さーて!夕日に向かって走りますか!!俺はお先に校庭に出ますね!!ではーっ!」
寛子 「え、ちょっと!喜戸くん!喜戸くん待って……あ、行っちゃった」
「私、ちょこっとあの子の行動力は見習いたいなぁ」
博哉 「う、うん。でも、外は雨だったの分かってなかったのかな、喜戸」
寛子 「あ!(…あっ)」
ゆりえ 「ありゃりゃぁ〜」
「あいつは、いつだって馬鹿だな」
咲乃 「馬鹿は風邪ひかないから大丈夫ですよ」

――再び静まり返る部室

寛子 「へっ、あ、ああ、そうね!じゃ、じゃあ、皆体育祭に向けて頑張っていきましょう!」
寛子・泉以外の部員 「はい!」




To be continued.

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