ろこもこゆーすふる〜美術部の日々〜
第2話 禁じられた活動
new→《当台本を利用してくださってる方へ》
大辰 咲乃(おおたつさくの)
女 高校1年生
今年の新入生。
どちらかというと内気でおっとりしており、背が小さい。
割と毒舌(正直)
第1話で入部を決めた。
赤星 寛子(あかぼしひろこ)
女 高校3年生
美術部部長。基本的には、真面目な姉さん気質。
某有名芸術大学を目指し勉学に奮闘中。
絵は天才的に上手いといえばそうだが、色彩センスだけは素人が見てもまるでない。
己ノ瀬 來(みのせらい)
女 高校2年生
本校一の美人。
色沙汰でいつも何かしら悩みを抱えている。そのため部では絵を描きながらストレス発散をしている。
普段はクール(気だるい感じ)だが、感情が高ぶると部内限定で甘えん坊になる。
しかし、考えていることが常に斜め上ではある。
新垣 博哉(にいがきひろや)
男 高校2年生
次期部長候補。見た目は爽やかな真面目な青年。
恐らく部で一番の常識人。しかし、女性陣の勢いに毎度負けている。
さらに、泉のテンションについていけず若干苦手意識がある。
喜戸 泉(きどいずみ)
男 高校1年生
今年の新入生。パワフルで熱い青年。
本人は至って真剣なのだが、よく周りには変人扱いされる。
実はそれには彼の趣味に問題があるかららしい。
その趣味とは、被服(衣装デザイン)である。
理由が不可解だが、彼も第1話で入部を決めた。
奥 要(おくかなめ)
男 27〜29歳くらい 教師
美術教師で美術部の顧問。
普段は涼しげな顔をしていて何を考えているのか分からないが
中身は完全なる熱血教師。
そして、話し出すと意外とおしゃべりで本人無自覚であるがナルシストでもある。
ちなみにボケもツッコミもでき、スルースキルが高い。
→
最初の台詞にとぶ
垣本 ゆりえ(かきもとゆりえ)女 高校3年生
明るく元気なスポーツ系天然娘。
中学時代は陸上部のキャプテンとして県内の大会を総なめにするほどの実力があったが
ひょんなことから美術部に入部したらしい。
第1話の部活動紹介で活動禁止になる原因をつくった張本人。
※今回は、部活の助っ人のため出番なし。
3:3:0台本
<キャスト>
大辰 咲乃 (♀):
赤星 寛子 (♀):
己ノ瀬 來 (♀):
新垣 博哉 (♂):
喜戸 泉 (♂):
奥 要 (♂):
<前回までのあらすじ>
博哉ナレ
「毎年、春に行われる部活動行事―部活動紹介―。これは俺たちにとって重要な大イベント。
なぜかというと、うちの美術部はいつも入部希望者が少ないので、これが貴重な勧誘活動になるから。
だから、部長である赤星先輩を中心に俺たちはより入念に勧誘方法を考えていたんです。
ところが当日、何を間違ったか部活動紹介で、ゆりえ先輩が自分の被っていた着ぐるみの頭を
ステージから落とし、生徒に当ててしまいそうになるという失態を犯してしまったせいで
新学期早々活動禁止に――。本当に有り得ない…。
途方に暮れた俺たちは、仕方なく休部中は部長の家で活動することにしましたが
なんとまさかのタイミングで2人も入部希望者が。奇跡としか思えない…!
ただ、その入部希望者のうちの一人が少々気にかかります。
己ノ瀬に興味を持ったから入部ってどうなんだ…?」
◆翌日 放課後 3年A1組教室(仮集合場所)
寛子
「――で、大辰さんと喜戸くんはこの美術部に入部するのは間違いないのね」
泉
「はっ、はい!」
咲乃
「…はい」
寛子
「まだなんだか、実感が湧かないんだけどわかりました。あ、体験入部からでもいいんだけどどうする?」
泉
「いえ、俺は部活動紹介で…いや、入学する前から美術部に入るって決めてましたからそんなの必要ありません!」
寛子
「そ、そこまで思ってたの?すごいわね……大辰さんは?」
咲乃
「あ…私はその…絵を描くのがずっと好きで……部活動紹介のときに見た人物デッサンと
モネのような暖かい風景画を見たときにここだ、って思ったので……!」
寛子
「へえ〜」
博哉
「なるほど」
來
「嬉しいな。あれ、ここにいる部長と私の絵なんだよね」
泉
「…おお!」
咲乃
「そうなんですか…!すごいなぁ…」
寛子
「…有難う」
來
「寛子先輩はこんな小さな部にいるけど、県下じゃこれだけデッサン力ある人はいないよ、きっと。
あと自画自賛になっちゃうけど私、結構この風景画…気に入ってるんだ」
寛子
「時間かかってたもんね、あれ。この表現力見習いたいわー」
泉
「…素晴らしいです!」
咲乃
「…私も
見惚
[
みと
]
れます…!」
博哉
「本当にすごいよね。でも、これは生まれながらの才能とかだけじゃないんだ」
咲乃
「…?」
寛子
「あのね、確かに人の持ってる才能も大切なんだけど、絵っていうのは常に描くことと
出来れば個性を出すことが必要なの」
來
「だから、あまりに絵を描かないと描けなくなっちゃうんだよね」
咲乃
「スランプ…ですか?」
寛子
「個人的にはスランプとはちょっと違うと思うよ。
スランプっていうのはずっと描けてたのに突然描けなくなる不調っていうやつだけど
この場合は自分の
怠惰
[
たいだ
]
が絵を描けないようにしている――ようなものかな」
咲乃
「へえ…!なるほど…」
泉
「お、おお…」
博哉
「かっこつけてしまったけど、これは、顧問の先生の受け売り」
來
「1日休むと、取り戻すのに3日かかるっていうしね。日々鍛錬ってこと」
咲乃
「……わ、わかりました。頑張って描きます…!」
寛子
「うん、頑張ってね」
泉
「……………おおおおおおおぉぉ!!」
博哉
「な、なんだ…??」
寛子
・
來
・
咲乃
「……??」
泉
「先輩!俺、感動しました……!
…正直なところ、入部を決めたのは己ノ瀬先輩の衣装の着こなしを見て
衝動を抑えきれなくなったという下心からでした…。
でも、今の話を聞いて本気で絵を描きたい!と心から思ったんです!
だから、その、絵を…デザインを描いたらその服を着てください!」
寛子
「は?」
咲乃
「…?」
來
「…へ。今、デザインって言った…よね?」
泉
「はい!言いました!」
來
「キミ、服作れるの?」
泉
「作れます!もう、大好きなんです!そのために生きてるくらい…!」
來
「へえ、すごいね〜」
寛子
「器用ねぇ、私玉結びすらできないよ」
咲乃
「私は針に糸さえ通らないです」
泉
「はーい、そうでしょう〜有難うございます!」
博哉
「あれ…被服部があったはずだけど、なんでそっちにしなかったの?」
泉
「そこっ!気になりますよね〜?」
博哉
「いや。それは…己ノ瀬に興味持ったからじゃないのか?」
泉
「やー確かにそれが一番の理由なんですけど、俺、部活動紹介がある前に
被服部
[
ひふくぶ
]
覗きにいったんですよー。
体験入部はまだ始まってなかったときですけど…」
寛子
「それで?」
泉
「コンコンってノックしたら、異様な雰囲気の女の人が出てきたんです!
それでその人に『新入部員に男などいらない…』っておどろおどろしい声で言われちゃって…
一目散に逃げてしまいました!暗い雰囲気も嫌ですけど、怖いのもすごく苦手なんで」
來
「そんなに怖い人がいるんだ?別に被服部に男の子入れたって悪くないのにねー。差別だね」
咲乃
「…女の子も男の子も関係ないですよね」
寛子
「だね。あ…そっか。だから、ゆりえが着ぐるみの案を出したときに被服部が挙がらなかったわけね。
あの子知ってたのかな、直感的に」
泉
「勘の鋭い先輩がいらっしゃるんですね…!その先輩は何処へ?」
來
「そういえば、今日は見かけてない…。ゆりえ先輩、今日は何部ですか?」
寛子
「ああ、今回は剣道部って言ってたかな。明日から合宿に行くらしいよ」
來
「…ん?合宿まで参加するんですか?気合い入ってますね」
寛子
「気合い入ってるというか、剣道をそもそもやったことがないらしいの」
泉
「えー…!」
博哉
「わ…。それなのに剣道部に行くなんて、ゆりえ先輩くらいでしょうね」
咲乃
「……あの、そのゆりえ先輩って、掛け持ちしているんですか?」
寛子
「んー掛け持ちというか、助っ人?たまに人数足りないからっていって、団体競技の部活に臨時部員として大会に出てる」
來
「中学時代は陸上部で、常に好成績叩き出してたらしいよ。
県内で知らない人がいないと言われるくらい有名だったって聞いた」
咲乃
「すごく、スポーツ万能なんですね」
寛子
「基本それしか能がないからね。あ、いや、あとは漢字も強いかな」
泉
「……すごすぎて言葉が出ません…。ん…?でもなんで美術部にいるんですか?」
來
「…むしろそれをそのままキミに返したいんだけど。ねー?博哉」
博哉
「まあね。理由の方は聞いたけど、同じくらい変かな」
泉
「なんですかそれ!さっきのは理由になってないっていうんですか〜?
暗い部活よりもちょっと変わった面白い雰囲気の部活の方がいいじゃないですか!」
來
「あ、ゆりえ先輩と同じこと言ってる…。今度、その手作りの服、見せてね」
泉
「わーかりました!任せてください!」
寛子
「………はい!理由はともかく、二人とも入部ということで間違いないようなので
ついでに顧問の先生を紹介しとこうか」
咲乃
「はい」
泉
「わかりましたー!あ、もしかして女の先生ですか?」
寛子
「残念。男ね」
泉
「くわぁ…残念だー!なんとも残念すぎる!」
――教室のドアが開く音
要
「……む」
泉
「……ひっ」
要
「……。男の先生で悪うございましたねえ」
泉
「……は、ははは…」
博哉
「あ、お疲れ様です先生」
寛子
「お疲れ様ですー」
來
「お疲れ様です」
咲乃
「…お疲れ様です」
泉
「…え、えっと、お疲れ様です!」
要
「おや?いつも飛び掛ってくる子がいないけど?」
寛子
「あー、今日は剣道部です。というか、ゆりえは飛び掛ってませんよ?多分」
要
「ん?そうか。……お、君らは見かけない顔だけど、新入部員かな?」
泉
「は、はい!これから入部します、喜戸泉といいます!」
要
「…ほう。で、そっちは?」
咲乃
「あっ、えと、大辰咲乃といいます。よろしくお願いします」
要
「はい、よろしく。私は、ここの美術部の顧問をしている奥だ。
先輩たちに聞いても分からないことがあれば、聞いてくれ。
……あーそれでだなお前たち…と、その前に2年の二人に話があるんだが…」
博哉
・
來
「なんですか?」
要
「大変伝えにくかったんだが、
高美博
[
こうびはく
]
のやつ、2次で落ちてたぞ」
來
「…そうですか」
博哉
「2次かー。思ったよりいったので俺は満足です。次はもっと上を狙います」
要
「良い意気込みだな、
新垣
[
にいがき
]
。まぁ、來も気を落とさず、前向きにやっていけ」
來
「わかりましたー」
博哉
「わかりました」
要
「――それで、だ」
寛子
・
來
・
博哉
・
咲乃
・
泉
「?」
要
「ちょっと早いが、文化祭で何をするかを考えないといかん」
寛子
「そうですね、再来月とはいえ、何か考えておいた方がいいですね」
要
「な、お前もそう思うだろ?去年なんか、前の3年のやつらが全く準備しなかったせいで他の部員が動けなくて
結局後輩の赤星たちがやったようなもんだったしな」
寛子
「いや、あれは先生のおかげですよ。多分あの時、先生が顧問になってなかったら何も出せませんでした」
博哉
「俺もそう思います。そういえば、最初に顧問だった永野先生が入院していたから
俺たちは今の部長に頼るしかなくて、代わりに来てくれたときはすごく嬉しかった記憶があります」
來
「要が描いてくれた鳥の絵も綺麗だったし、面白かったですね、去年の文化祭」
要
「またお前、俺のこと呼び捨てか…」
來
「良いじゃないですか、先生のこと知ってる生徒、呼び捨て多いですよ?」
要
「…まあ、そうだが…しかし…なんでこうも生徒は馴れ馴れしいんだ」
來
「んー。若い先生が珍しいのと、人気があるからだと思いますよ」
要
「……む、そうか」
寛子
「……えーと要先生」
要
「ん?」
寛子
「その文化祭の展示ですが、絵は何枚あればいいですか?」
要
「そうだな……、1人2枚ずつで、12枚ってところか。
それで、最低文化祭の3日前までに作品を完成するようにしなさい」
寛子
「わかりました」
要
「あと、細かいところは君たちに任せるから、飾りつけとかその他諸々早いうちに決めてくれ。
何か用意できないものがあれば、協力するから」
寛子
「はい、ありがとうございます」
泉
「……おお、話を聞いてるとなんだかワクワクしてきました!」
來
「ワクワク?まあ、高校に入学して初めての文化祭だもんね。…あ、文化祭用に服とか作りたかったりするの?」
泉
「あ…はい!ど、どうでしょうか?」
要
「は?服だ?なんで美術部なのに作るんだ?」
博哉
「…喜戸くんは、服を作るのが得意なんだそうです」
要
「…ほう」
寛子
「あと、彼は被服部が恐ろしくて、美術部にしたらしいです」
要
「ふーん。なるほどね。……え、被服部とかこの学校にあるのか」
來
「(ぼそっと)要、ひどい」
要
「…すまん。それで、きみはなんて言ったか…」
泉
「あ、喜戸です!喜戸泉です!覚えてください!」
要
「男の名前を覚える気はないなぁ……――」
泉
「えー!被服部の人と似たようなことを言わないでくださいよ」
要
「ふ、それは冗談だ。まあ、とりあえず喜戸は服が作れるわけだ」
泉
「はい!和服以外でしたら任せてください!」
要
「ほー、和服以外でもすごいものはすごいがな」
寛子
「あ、そうだ。文化祭用に皆のユニフォームのようなものでもつくる?」
博哉
「ユニフォームですか〜。うーん……ベレー帽とエプロン?」
寛子
「あれ、ちょっとイメージ古くない?」
博哉
「…え?そうですか。他にイメージないんですけど」
來
「……おかしいよ。咲乃ちゃんもそう思うでしょ?」
咲乃
「……うーん。古すぎますね」
博哉
「わー、意外とズバッというね大辰さん。……それで他のイメージは…――」
要
「………俺もベレー帽とエプロンなんだが」
――暫く重い雰囲気が流れる
咲乃
「……あ、すみません……」
來
「……謝らなくてもいいよ、要"大"先生だから」
要
「來、そのフォローは要らんぞ」
來
「…ま、さっきのイメージはちょっと古いってことで、新しいタイプの制服?みたいなのを作っちゃえば?」
泉
「制服ですか〜。いいですね!テンション上がります!」
博哉
「テンション上がるのか……」
泉
「もちろんですよ〜!」
要
「(少し気持ち悪いな…)」
來
「もちろん、女子のはフリルとか付けてくれるよね?」
寛子
「女子の制服にフリルってだいたい……」
泉
「(寛子の台詞をかき消すように)フリルですか!ナイスアイデアとしか言いようがないです先輩!」
來
「ナイスなの?ありがとねー」
泉
「いやぁ、趣味が合って嬉しい限りです!」
來
「(軽く笑う)そうね」
咲乃
「フリル…」
寛子
「あ、あ、大辰さん。大丈夫だから、こんなの本気にしなくていいよ?」
博哉
「そ、そうだよ。気にしたら駄目だよ?そもそもそんな部活じゃないはずだし…ね?」
要
「……そんな部活ってどんなだ、新垣」
博哉
「……え、いや、その……失言でした」
要
「よろしい。というか、あれか。喜戸は秋葉系か?」
泉
「え?まぁ、理解はあります。……あ、わかった。要先生、メイドさん連想したでしょう!」
來
「あー、要、興味あるんだー」
要
「は…違っ…」
泉
「なるほど、わかりました。そんな先生のためにも女子部員の制服にフリルを(殴られる)……うがっ!!」
要
「そんなのどーでもいいわぁ!!美術部は美術部らしく、真剣に絵を描いて綺麗に展示しろ!!」
來
「要、教育者は体罰したらいけないよ」
要
「じゃかあしいわ!!俺は職員室に戻る!じゃあな!」
――すごい音を立てて教室のドアが閉まる
――そして、少しの無言
咲乃
「……今のは正当な体罰でしたね」
寛子
「……大辰さん、今の発言ちょっと黒いかな」
To be continued.
※注意:教員の体罰は禁止されてます
※只今台本アンケートを行っております。お答えいただける方は
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