ろこもこゆーすふる〜美術部の日々〜

  第3話 スタート!



new→《当台本を利用してくださってる方へ》




垣本 ゆりえ(かきもとゆりえ)女 高校3年生
明るく元気なスポーツ系天然娘。
中学時代は陸上部のキャプテンとして県内の大会を総なめにするほどの実力があったが
ひょんなことから美術部に入部したらしい。
第1話の部活動紹介で活動禁止になる原因をつくった張本人。


大辰 咲乃(おおたつさくの)女 高校1年生
今年の新入生。
どちらかというと内気でおっとりしており、背が小さい。
割と毒舌(正直)
第1話で入部を決めた。


赤星 寛子(あかぼしひろこ)女 高校3年生
美術部部長。基本的には、真面目な姉さん気質。
某有名芸術大学を目指し勉学に奮闘中。
絵は天才的に上手いといえばそうだが、色彩センスだけは素人が見てもまるでない。


己ノ瀬 來(みのせらい)女 高校2年生
本校一の美人。
色沙汰でいつも何かしら悩みを抱えている。そのため部では絵を描きながらストレス発散をしている。
普段はクール(気だるい感じ)だが、感情が高ぶると部内限定で甘えん坊になる。
しかし、考えていることが常に斜め上ではある。


新垣 博哉(にいがきひろや)男 高校2年生
次期部長候補。見た目は爽やかな真面目な青年。
恐らく部で一番の常識人。しかし、女性陣の勢いに毎度負けている。
さらに、泉のテンションについていけず若干苦手意識がある。


喜戸 泉(きどいずみ)男 高校1年生
今年の新入生。パワフルで熱い青年。
本人は至って真剣なのだが、よく周りには変人扱いされる。
実はそれには彼の趣味に問題があるかららしい。
その趣味とは、被服(衣装デザイン)である。
理由が不可解だが、彼も第1話で入部を決めた。


奥 要(おくかなめ)男 27〜29歳くらい 教師
美術教師で美術部の顧問。
普段は涼しげな顔をしていて何を考えているのか分からないが
中身は完全なる熱血教師。
そして、話し出すと意外とおしゃべりで本人無自覚であるがナルシストでもある。
ちなみにボケもツッコミもでき、スルースキルが高い。


右京 朗(うきょうほがら)男 高校2年生
童顔で実年齢よりも幼く見られ、男扱いしてもらえないのが悩みの青年。
そのため、自分=女というキーワードにやたら敏感。
昨年の体育祭後に美術部を辞めたはずだったが…
最初の台詞にとぶ





4:4:0若しくは3:4:1台本

<キャスト>
垣本 ゆりえ (♀):
大辰 咲乃  (♀):
赤星 寛子  (♀):
己ノ瀬 來   (♀):
新垣 博哉  (♂):
喜戸 泉    (♂):
奥 要    (♂):
右京 朗 (♂or不):










<前回までのあらすじ>

咲乃ナレ 「紆余曲折もありましたが、私たち新入部員が入ったことで賑やかになった美術部。
      人数が少ないですが、とても個性的な人が集まった楽しい部活です。
      えっと、前回問題になったのが入部した理由ですね。私が入部した理由はともかく
      やっぱり入部した理由がいまいち先輩方に理解されない喜戸くん。
      彼が文化祭の提案で早速自分の能力を発揮したいと豪語しちゃいます。
      しかし、あまりの熱さに[らい]先輩以外は乗り気でない様子。
      結局、顧問の要先生にも理解が得られず、文化祭の提案は決まらなかったのでした――。
     …私は喜戸くんを一生理解できなさそうです…」



◆数日後 放課後 美術部前廊下

「諸君、1週間ご苦労様。なにぶん毎日不便だったと思うが
   上から活動禁止解除のお達しが来たので、今日でその生活も終わりだ。良かったな」
ゆりえ 「やったぁ〜ぃ!待ってましたぁ!」
寛子 「『待ってましたぁ!』…じゃないでしょ?あんたのせいでそうなったんだから、反省しなさいよ?」
ゆりえ 「はぁい…反省しま〜す…」
博哉 「まぁ、いいじゃないですか。今後の活動には響かなかったんですから」
「それに、全く絵が描けなかった訳でもないですし、ここはゆりえ先輩を許してあげましょうよ」
「俺はよく知りませんけど、復活したんですから大丈夫ですよ!」
寛子 「うん…許すとか大丈夫とかじゃないけど……。もう、何かやらかさないようにしてね」
ゆりえ 「あいよ〜合点承知ぃ〜!本当にごめんね、皆!」


◆美術部部室

「……じゃあ、開けるぞ」

――鍵を開けて、皆中に入る

ゆりえ 「おーっ。懐かしい空気だ〜」
寛子 「あれ、確かに懐かしいわ…」
「わ…1週間も離れてるとこんなに懐かしく感じるんだ…」
博哉 「やっぱり居心地いいですね」
咲乃 「…画材の匂いですね、落ち着きます」
「こ、これは……ん?……なんともエキセントリックな"にほい"が…!」
「喜戸、おまえは早速退部でいいな?」
「え!?いきなりなんてことを言うんですか、先生!」
「美術部部員たる者、この空間を受け付けないなど
   それはすなわち美術部がおまえを受け付けてないということだ」
「そそそ、そんなぁ…!冗談ですよね!」
「………」
「…へ?な、なんとか言って下さいよ〜!」
「………」
「えっ?えっ?」
ゆりえ 「まぁまぁ、要〜。おちょくるの、もうやめてあげてよ〜?」
「わーかった。やめるから。…それにしてもつくづく言葉に惑わされるな、喜戸は」
「だって、真面目な顔して言われたら分からないじゃないですか!」
「はいはい。…さて、今日から美術部始動だが、顧問の私に迷惑かけない程度に存分に活動をしてくれ。
   あと、まだ本格的に作業に入ってないと思うから、下準備からでも始めてくれ。それから、あ…いや、これはいいか。
   じゃあ、俺は職員会議があるから、一度抜けるな。何かあったら呼べよ?ではよろしく…」
ゆりえ咲乃寛子博哉 「わかりました(ー!)」

――要、部室を去る

寛子 「――はい、では私たちの部室が戻ってきたところで……んーとそうね、ゆりえ?」
ゆりえ 「はいはーい、なんでしょーか?」
寛子 「二人に会うのは2回目だと思うけどいちおう挨拶して」
ゆりえ 「あいよー!えっと、二人とも改めまして、垣本[かきもと]ゆりえといいます!
     ぶっちゃけるとこの中で一番絵が下手くそだけど、道具の使い方は分かってるはず…!
     なので!何かあったらドシドシ聞いてね〜!」
咲乃 「わかりました、よろしくお願いします」
「改めまして喜戸泉でーす!よろしくお願いしま〜す!
   あ、ところで先輩はスポーツ万能でいろんなところへ助っ人に行ってるって聞いたんですけど…」
ゆりえ 「う?スポーツ万能って?私、ただ面白いことが大好きで
     こういうこと頼まれるのならやるしかないなっ!って思うから頑張ってるんだよ〜」
「それがゆりえ先輩のポリシーですからね」
ゆりえ 「そうそうっ」
咲乃 「私も先輩みたいに運動できたら良かったな…」
博哉 「あーゆりえ先輩の場合は、かなり特殊なパターンだからなぁ…。
    大辰さんは、大辰さんができることをやったほうがいいよ?」
咲乃 「うーん…ですね」
「いやはや、先輩くらい頼りにされたいです…!」
寛子 「多分、喜戸くんの場合……、その能力が満たされていても色々な面で損してるよね」
「ま、まじですか…!?」
ゆりえ 「ん?喜戸っち、なんかすごいことできちゃったりするの〜?」
「すごいですよ、この子。こんなものが作れるんです」

――泉の試作品の服を見せる

ゆりえ 「ほえ―――!わ〜デザイン凝ってる〜触ってもいーいー??」
「ふふん、いいですよ。これはですね〜って、あれ??來先輩いつの間に手に取っちゃってるんですか??」
「いや、さっき要と騒いでたときに、その大きな紙袋から見えたから…」
「なんという観察力と素早さだ…!」
博哉 「………。そういえば、ゆりえ先輩、もう試合だったんですか?」
ゆりえ 「いいなぁ〜!いいなぁ〜!喜戸っち、もっと何か作ってよ〜!」

――試作品の服について騒ぐ2人と冷静に見据える1人

博哉 「(って、聞いてないな…)」
寛子 「ええとね、ゆりえはまだ試合じゃないよ。でも副将候補らしいからね〜。また[しばら]くいなくなる時期があるかもね」
博哉 「副将?初心者で数日間合宿行っただけで、副将っておかしくないですか…?
    確かに剣道部は人数多くないっていうのは聞きましたけど」
寛子 「あのね、どうやら部長はそれなりに強いみたいなんだけど、他の部員が練習に耐えられない人ばかりらしいよ」
博哉 「いや、新人戦とか5月か6月くらいじゃないですか?それなのに無理とか決めつけるなんて…」
ゆりえ 「…んー?剣道部の話〜?」
博哉 「(戻ってきた…)あ、はい。そうです」
ゆりえ 「それがね、大会に出る予定だった数少ない2年生全員、辞めたのが大きな原因みたいだよー」
博哉 「ええ…」
寛子 「わー…。と、とりあえず、うちはそうならないようにしようね」
博哉 「はい…」
ゆりえ 「は〜い」
寛子 「さてと、この辺りで雑談はおしまいね。新入部員が入ったので早速、作業を始めていくよ。
    まあ、最初から大きなものを描かせるのもあれだから…」
咲乃 「?」
「…寛子先輩、これ…ですよね?」
博哉 「あ、これか」
「ん?これはなんでしょう?」
寛子 「さー、大辰さんはわかるかな?」
咲乃 「んー…。やったことがないので分からないですね」
寛子 「答えはマーブリング。結構色んなところで見かけると思うんだけど……
    まずはこうやってマーブリング用のセットを用意して―」
ゆりえ 「そんで、専用の水溶液を調節してトレーの中に入れますっ。
     んでもって、好きな色を選んで液の中に入れたら、付属のチップとか爪楊枝とかで、好きなようにかき混ぜま〜す」
「模様ができたら、こんな感じの紙を用意して、液の表面に付けて…」
寛子 「5秒くらい経ったら、引き上げて新聞紙に持っていくと――」
ゆりえ 「5・4・3・2・1っと。ひっくり返したら、はーい完成〜!」

――マーブリングで作成した絵を見せる

咲乃 「あ…、綺麗です…!」
「おお!いとも簡単に芸術作品がぁ!」
「ね。綺麗でしょ?今日はゆりえ先輩が色を選んでやってくれたから、こんな風になったけど
   これは寛子先輩にやらせたらいけないからね」
寛子 「………」
咲乃 「…なんでですか?」
博哉 「残念ながら、色彩センスに問題があるんだ…」
咲乃 「…え?あんなにデッサン力があるのに…ですか?」
ゆりえ 「えーっと、それとは別なのかも?…例えば抹茶色[まっちゃいろ]に赤紫を合わせようとしちゃう感じかなぁ」
咲乃 「あー…」
「んーむ。それは極端な例ですけど、ファッション的に考えても微妙なところですねえ」
「でしょ?ホント、私服、何着てるんだろうっていつも思ってる」
寛子 「……あー、言いたい放題言うね……私結構気にしてるんだから、そこまでにしておいて…」
博哉 「すみません…」
「…言い過ぎました」
ゆりえ 「そういや、要が心配してたよ?実技の平面構成は大丈夫なのか?って」
寛子 「そこに触れないでよー…!」
ゆりえ 「寛子、大丈夫だって。自分の力を信じるんだよっ」
寛子 「あんたに言われても説得力ない…」
ゆりえ 「……あれー?……ん?」

――部室の入り口に人影が見える

「今のって……」
ゆりえ 「よし、ちょっと行ってくるよっと」

――逃げる人影を追い部室を飛び出す

「はやっ…!」
咲乃 「……今、誰がいたんですか?」
博哉 「右京だな、あれは」
咲乃 「うきょう…?」
博哉 「ちょっと見てくる」
「…私も」
寛子 「…よく分からないと思うから二人とも待ってて」
咲乃 「え?」


◆美術部前廊下

ゆりえ 「ほがらん!久しぶり!どうしたの?珍しいね〜」
「わー!わー!……もうっ。な、なんですかっ。腕を[つか]んだまま白々しいですよ…?」
博哉 「離すから。右京、とりあえず話を聞いて」
「……」
寛子[ほがら]くん、あの時は本当にごめんなさい」
「え…なんで謝るんですか?赤星先輩」
寛子 「当時の3年の先輩とはいえ、作品を壊してしまって…」
「………」
「……あれ、かなり大切にしてたって、知ってたよ。私」
「………そっか。いや、もう済んだことだからいいんだ。それに、とっくの昔に退部してるしね」
ゆりえ 「ねえ、ほがらん?そんなひどいことする先輩さー、もういないんだよ?」
「知ってますよ?」
「じゃあ、戻っておいでよ」
「………」
博哉 「…覗いてたってことはさ、戻りたいんだろ?」
「…え、ええと………」
ゆりえ 「おかえりぃ!」
寛子博哉 「!?」
「……突然なんですか!?」
ゆりえ 「だって、ほがらんがそんな顔をするときって、肯定するときの顔だもん。違ったっけ〜?」
「…ち、違うも何も…」
寛子 「ずっと言いづらかったんだよね?廊下で会っても視線が合ったかと思えば
    すぐに逸らして逃げちゃうし、どんな風に考えてるのかなって思ってた」
「要ならすんなり受け入れてくれるよ、事情を分かってる」
「いやー……でも」
「………おい、そこで何をやっている?」
寛子 「あ、要先生…」
「ん?お前たちか……。おや?見覚えのある顔が……朗か?」
「せ、先生……」
「この前見たぞ。入部届けを書いたものの、俺の机に置こうかどうか迷っていたのを」
ゆりえ 「へぇ〜ほがらん可愛いなぁ〜!」
「い、いや、そ、それはですね…!」
「結局どうするの?要も来たし、濁す必要もないよね?」
博哉 「こんなときに素直にならなくてどうするんだよ。後悔するの嫌なんだろ?
    確かにあの絵はもう戻ってこないけど、それを超える絵を描こうと思えば描けるんだぞ」
「………」
「何を迷う必要がある。ほら、入部届けを出してみろ。ちゃんと受け取るから」
「(だんだん笑顔になる)…………はい」
「うん、よろしい。しっかりと今、入部届け、受け取ったぞ」
寛子 「安心して、またじっくり皆で絵が描けるから」
「……はい、わかりました。えっと…その…ゆりえ先輩…」
ゆりえ 「うん〜?」
「ただいま。……でいいんですよね?」
ゆりえ 「へへへ、おかえり!ほがらんは、100点満点だね!しかも、笑顔だって満点だっ」
「(笑う)ありがとうございます。……笑顔もなんですね」
ゆりえ 「うん!だって、ほがらんが笑った顔、可愛いんだもん」


* * *


◆美術部部室

――部室のドアが開く音

「あ、お疲れ様ですー!どうしたんですかー?」
咲乃 「あ、えと、大丈夫…でしたか?」
寛子 「二人ともごめんね、ちょっと色々あってね…」

――部室のドアが再度開く音

「……え、……あ……」
「……えーとこの人は、私と同学年で去年まで部員として来てた右京くん。今日からまた入部したから」
咲乃 「だん…せい…?」
「……………ま、また言われたぁ。なぜなんだ、なぜ年上年下関係なくこの反応なんだぁ!」
博哉 「まあまあ、落ち着いて…」
「これが落ち着いてられるかってぇの!保育園時代は仕方なかったとしても
   中学になっても高校になっても、いっつもいっつもこれとか、もうなんなんだよー!」
「あの…ゴシックロリータとか……いけちゃいそうですよね!」
ゆりえ 「ああ、ゴスロリかぁ〜。いけそうだね、ほがらんなら」
「ちょっと待てーい!今、こいつ絶対絶対『女装』のことを考えてた!しかも、信用しているゆりえ先輩までも!
   あーもう、ありえない!ありえなさすぎる!どこをどう見ても僕は男だろうが!」
「まあ、朗。こういうのは今に始まったことじゃないから、冷静に対処した方が被害が少ないぞ」
「……く、くぅ…」
寛子 「ええっとね、朗くん。要先生が言うようにまずは冷静になってみようか?ほら、深呼吸をして」
「はい…」
寛子 「早速だけど、これだけ人数が揃ったので、ひとつ提案があるの」
ゆりえ 「……?」
博哉 「文化祭のですか?」
寛子 「そうそう。7人もいるんだし、大きめの風景画とか空想画が描けそうだなぁって……。どうでしょうか、先生?」
「あー…、別にいいぞ?そういった試みはどんどんするべきだからな。資料がいるならこちらでも用意するが」
寛子 「わかりました、お願いします。という訳で、それも頑張っていこうね、皆」
ゆりえ咲乃博哉 「はい!」



To be continued.

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