ろこもこゆーすふる〜美術部の日々〜

  第6話 オーストリッチな人々



new→《当台本を利用してくださってる方へ》




垣本 ゆりえ(かきもとゆりえ)女 高校3年生
明るく元気なスポーツ系天然娘。
中学時代は陸上部のキャプテンとして県内の大会を総なめにするほどの実力があったが
ひょんなことから美術部に入部したらしい。
朗には特に信頼されている。


大辰 咲乃(おおたつさくの)女 高校1年生
今年の新入生。
どちらかというと内気でおっとりしており、背が小さい。
割と毒舌(正直)。いや、もしかすると腹黒?スイッチがオンオフする。
第1話で入部を決めた。


赤星 寛子(あかぼしひろこ)女 高校3年生
美術部部長。基本的には、真面目な姉さん気質。
某有名芸術大学を目指し勉学に奮闘中。
絵は天才的に上手いといえばそうだが、色彩センスだけは素人が見てもまるでない。
ゆりえ曰く、抹茶色に赤紫を合わせてしまうほど。


己ノ瀬 來(みのせらい)女 高校2年生
本校一の美人。
色沙汰でいつも何かしら悩みを抱えている。そのため部では絵を描きながらストレス発散をしている。
普段はクール(気だるい感じ)だが、感情が高ぶると部内限定で甘えん坊になる。
しかし、考えていることが常に斜め上ではある。


新垣 博哉(にいがきひろや)男 高校2年生
次期部長候補。見た目は爽やかな真面目な青年。
恐らく部で一番の常識人。しかし、女性陣の勢いに毎度負けている。
さらに、泉のテンションについていけず若干苦手意識がある。


喜戸 泉(きどいずみ)男 高校1年生
今年の新入生。パワフルで熱い青年。
本人は至って真剣なのだが、よく周りには変人扱いされる。
実はそれには彼の趣味に問題があるかららしい。
その趣味とは、被服(衣装デザイン)である。
理由が不可解だが、彼も第1話で入部を決めた。


奥 要(おくかなめ)男 27〜29歳くらい 教師
美術教師で美術部の顧問。
普段は涼しげな顔をしていて何を考えているのか分からないが
中身は完全なる熱血教師。
そして、話し出すと意外とおしゃべりで本人無自覚であるがナルシストでもある。
ちなみにボケもツッコミもでき、スルースキルが高い。


右京 朗(うきょうほがら)男 高校2年生
童顔で実年齢よりも幼く見られ、男扱いしてもらえないのが悩みの青年。
そのため、自分=女というキーワードにやたら敏感。
男らしく振舞おうとしているが、微かに小心者の要素が見え隠れしている。
一度退部していたが、第3話で踏ん切りがつき再入部を果たした。
ゆりえを尊敬しているが、泉に少々厳しい。


湯越 晴久(ゆごしはるひさ)男 高校3年生
手芸部部長。第1話に一瞬だけ(回想?イメージ)登場しているが、今回しっかりと登場。
色白で黒縁メガネが印象的。身長はそれなりにあるがひょろっとしている。
重いものを全然運べず気弱でかつ人が苦手だというが…
最初の台詞にとぶ





5:4:0若しくは4:4:1台本

<キャスト>
垣本 ゆりえ     (♀):
赤星 寛子      (♀):
己ノ瀬 來       (♀):
大辰咲乃       (♀):
新垣 博哉      (♂):
喜戸 泉        (♂):
奥 要         (♂):
右京 朗     (♂or不):
湯越 晴久      (♂):














<前回までのあらすじ>

來ナレ 「毎年、入部希望者が少なく、常に廃部スレスレを行き交いながらも、積極的に活動している私たち美術部。
     先輩方の努力の甲斐あって、新入部員も増えて順調な滑り出しを迎えています。
     しかし、前回、私は…思い出したくないんだけど…
     男の子からの一方的なメール・通話によって、精神的ダメージを受けてしまい、色々と面倒なことに――。
     まあ、でも、部員の皆の励ましや要の助言があって、なんとか復帰することができたところです。
     これからは、文化祭用の作品作りかな。皆頑張っていきましょうね(軽く笑う)」






◆放課後 美術部部室

ゆりえ 「博哉〜。ギブアップ、してもいい…かなぁ…」
博哉 「あの、ゆりえ先輩、何を言ってるんですか。文化祭まであと少ししか時間がないって知ってますか」
ゆりえ 「わかってるよう。あと、3週…」
寛子 「1 週 間 と 3 日 わかる?もう1週間しかないの」
ゆりえ 「あうー。私に現実を見せてないでよ〜」
「せーんぱい。大丈夫ですって。俺なんて、ほぉら、まだ真っ白 ですよ〜?いやぁ、綺麗過ぎて眩しい……うぐぁっ」
「(低音でわざとらしく)喜戸くーん。何を自慢してるのかなぁ。先生言いましたよねー?1人何枚描くんでしたっけー?」
「にににににに、2枚?だったかと!」
「(クールさを取り戻して)正解。では、美術部諸君に質問だ。現時点で1枚描けている部員は手を上げてみろ」

――咲乃、寛子、博哉、來、朗が手を上げる

ゆりえ 「へっ?皆、そんなに進んでるの?え、えーと、そだ!來ちゃんはどこまで進んでるの?」
「もうすぐ、2枚目の仕上げですね。といっても、完成度を上げるためにスパッタリングで
   遊んでみようかと思っているだけなので、ほとんど仕上がっているようなものです」
ゆりえ 「えええっ…來ちゃん、作業早すぎるよう…っ」
「早くないですよ、すごく急いだだけです。私は、暫く美術部休んでいたから
   その分時間足りなくてどうしようかと思っていたくらいですよ」
「確かに來、あの事件の後、ここに1週間ちょっとは来なかったよなぁ。
   それでここまで出来たんだからすごいよ。流石、美術部一の集中力の持ち主だよ」
博哉 「まあ、[らい]もすごいけど、もしかしたら一番凄いのは大辰[おおたつ]さんかもしれないな」
寛子 「うん、確かにあのどんな状況にも耐えうる集中力は誰にも負けないかもね」
咲乃 「(照れて)へっ?あ、いえ、そんなことないです…」
ゆりえ 「あはは、咲乃ちゃん可愛い〜。謙遜しなくたっていいのにぃ」
咲乃 「謙遜とか、その…」
「そうですよね!可愛いものこそ、嬉しがっていただいた方が
   断然こちらも[]でようっていう気持ちが高まるというのに!
   でも、恥ずかしがるっていうのも、現代の女性には必要な要素かもしれない
   …パワフルで男性にも負けないあの大胆さ、そして美しさを強調するクールなオーラ……
   ああ、なんだか自分の中の美しい女性像が徐々にアバウトになって…!」
「――おい」
「ひえっ!」
「あと、垣本。……垣本」
「ゆりえ先輩。呼ばれてますよ〜」
ゆりえ 「はぅ!」
「大丈夫か…?(咳払い)いいか、これから俺が話すことをよく聞いてくれ。
   文化祭は美術部にとって非常に大切な行事だ。
   もちろん、学校全体としても、お前たち個人個人、クラスから見ても同じことが言える。
   では、何で文化祭は大切な行事なんだと思うか?」
ゆりえ 「う〜ん。皆と仲良くして思い出を作るため?」
「それもあるが、もっと他にないか?喜戸」
「じゃあ、日頃の努力の成果を発揮するためかと!」
「……」
「へ??な、なにか変なこと言いました?」
「(無視して)……じゃあ、赤星、お前はどう思う?」
寛子 「そうですね。社会で生きていくため…とかですか?」
「曖昧ではあるが、大方当たってるな」
博哉 「ということは、文化祭はただの学校行事ということではないってことですね」
咲乃 「な、なるほど…深いですね」
「そうだな。まあ、さらに詳しく言うならば、社会で生きていくために、基本的なマナーを学び
   そして自分の能力を高め、人を助けたり、助けられたり、そうやって成長していく過程で必要なイベントだということだ」
咲乃 「文化祭って奥が深いですね…!」
「難しい…しかしながら勉強になります、要先生!」
「そう考えると、つまり、要が言いたいのって……締め切りを守ることがいかに大切かってことだよね」
「そんなところだ」
「いやぁ、來先輩。締め切り守らないといけないっていうのは、こんな俺でも分かってますよー?」
「じゃあ、なんでお前は1週間前なのに白紙なんだよ?
   同じように進んでないっていうゆりえ先輩でもいちおう着色には入ってるんだぞ」
「――やぁ。それは…えー……」
寛子 「朗くん、あんまり責めないであげて。私、もう2週間"しか"ないとか1週間"しか"ないとか、言い続けてきたけど
    それが逆にやる気を削いじゃって進まなかったのかもしれないし」
「いや、部長のせいじゃないです。だって、別に、つい最近締め切りが決まったわけではないじゃないですから。
   だから先々のことを考えて行動しなかったコイツが悪いんですっ」
寛子 「うーん…それはそうなんだけど…」
博哉 「…正論だけど…右京、ちょっと落ち着こう」
「な、なんだよ。いきなり。ゆりえ先輩には早く描けって言ってたくせに」
ゆりえ 「(びくっとする)」
博哉 「そうだけど、ゆりえ先輩とはまた違うぞ、喜戸は。だって、新入生でそもそも初心者だ」
「へ、こいつ服作ってるんじゃなかったっけ」
「ええ、作ってます!まさにこーんなデザイン構想が『ガンガン』に出てますよ!」
咲乃 「フリル…。また喜戸くんフリルの洋服作ってるなんて…。(小さく)あっ、あっ、悪趣味」
寛子 「大辰さん…?怖い顔、しないよ?」
「ほら!絵、描けてんじゃん!だからこいつ経験者と同じような感じだし」
「いや、これはあれでしょ。服を作るためのデザイン画。
   ある程度は絵描けないといけないとは思うけど…ちょっと違うんじゃない?ねっ、要?」
「…そうだな。俺はそういったのには疎いが…
   それが絵を専門的に学んできたことかと聞かれたならば、そうではないと答えるな」
「そう…なんですか」
「まあ、詳しくは分からんがな。とりあえず垣本も、喜戸も、締め切りには間に合うようにな。
   どちらも絵を描くのは苦手かもしれんが、美術部に入った以上最低限の目標は達成しろよ。じゃないと、俺も朗もうるさいぞ」
「(恥ずかしそうに)ぼ、僕そんなにうるさくな…っ」
ゆりえ 「がっ、頑張りまーす!」
「最善を尽くします!」

――ドアをノックする音

寛子 「あれ、こんな時期に誰だろ。生徒会かな?大辰さん、近いからちょっと出てくれる?きっと文化祭の書類受け取るだけだから」
咲乃 「は、はいっ。今、開けます」

――ひょろっとした見たことがない男が顔を出す

晴久 「……あの」
咲乃 「…」
晴久 「その…なんでしょう。か、垣本ゆりえさんはいらっしゃいますか?」
咲乃 「(心底嫌そうな顔をして)せ、先輩…凄まじく白い方がいらっしゃってます」
寛子 「白…?ごめん、よく分かんないから私出るね。――はい、なんでしょうか……って。あ……」
晴久 「あっ、あか、赤星さんですよね?美術部部長の」
寛子 「そうですけど、もしかして、その、あなたは手芸部の部長さんだったりとか…」
晴久 「え、ええ。そうです。手芸部で部長を務めている湯越晴久…といいます。
    …その、部活動紹介の時はお世話になりまして……垣本ゆりえさんにご挨拶に参りました」
寛子 「ゆりえに…?わかりました。今、呼びますね。――ゆりえ、作業再開してるところごめん、手芸部の部長さんが着てるわよ」
ゆりえ 「うぬー、上手く立体的にならないぃ……ほえ?手芸部部長?なーんだろ。今行きま〜す」
「…手芸部部長って、あの黒縁メガネで色白で細い…?ゆりえ先輩に何の用かな」
博哉 「さあ…。何か関係していたような、していなかったような。ゆりえ先輩は人脈広すぎてわからないしな…」
「そうね。私ちょっと気になるなあ」
ゆりえ 「んと、お待たせしました〜。何の用でしょうかっ?」
晴久 「お、おおお。こんにちは。手芸部部長の湯越といいます。先日はこの子が…お世話になりました」
ゆりえ 「あーいえいえ、こちらこそお世話に〜。ん?この子ってなんだ?」

――大きな青い着ぐるみが晴久の隣からひょっこり現れる

ゆりえ 「――ドラ○も〜ん!そっか、部活動紹介の時に無理言って借りちゃったんだっけ。
     あの時は迷惑かけてごめんなさいっ。しかも、頭の後ろの方少し傷が入っちゃって」
晴久 「いいんです、そんなこと。ぼ、僕が修理すれば…いえ、作り直したっていいんです。
    なにせ、き、着ぐるみ作りは、僕のロマンですから、フフフフフ。…あ、ああ、そうでした。お礼がしたくてですね」
ゆりえ 「うんうん」
咲乃 「……先輩、大丈夫なんでしょうか」
博哉 「ん?大丈夫だよ。あの人、見た目はちょっと近寄りがたいけど、悪い噂は聞かないし」
咲乃 「いや、噂は聞かなくても、その、來先輩みたいに精神的苦痛とかあわせられたりしたら…」
「うーん。あの人はないでしょ、きっと。人が苦手だっていうし、ましてや女の子に話しかけるなんて
   本人はいっぱいいっぱいじゃない?」
「(軽く笑って)じゃあ、精神的苦痛を与える以前の問題だなぁ」
「いやぁ、それに、あの方には何か俺と同じにおいがしますからね〜!」
咲乃寛子博哉 「……」
「あーにおいといっても、一般的に言う『におい』ではないですよ?ええ。例えば、同類といいますか、仲間ともいいますか!
   もしかすると、相棒だったりライバルだったりもするかもしれないですね〜!ん、あとは兄弟とかもいけそうですよね!
   (満足したように)うん。兎にも角にも、言葉に出来ない何かが―――(出来たらアドリブで次の台詞まで続けてください)
咲乃 「(泉の話の途中から)喜戸くんと、あの方がタッグを組んだ日には…私、美術部やめてもいいですよね」
「ああ、俺が許可しよう」
寛子博哉 「せ、先生…!」
咲乃 「(我に返って)へ、へ…?」
「――そうまさにそれは…!ってどうしました?」
「(鼻で笑う)おまえのせいで、大辰がやめるらしい」
「お、俺のせいですかっ!?」
咲乃 「…………え、えと、大よそ…」
「…どっちだっ!」
「ま、何にせよ。その妄想癖、治したら許してくれるんじゃないのか」
「もっ、妄想癖って!いくら先生でも酷すぎますよ〜!」
「(高笑い。その後何食わぬ顔で)さ、おまえは作業の続きだ、続き」

――部室の入り口で話していたゆりえが戻ってくる

ゆりえ 「ゆりえさーん、只今戻りましたぁ。どうしよう聞いて聞いて!」
寛子 「なんだかテンション高いわね。何かいいことでもあった?」
ゆりえ 「あーそれがね〜、手芸部が今年の文化祭でメイド+着ぐるみ喫茶やるんだって〜!そんで、そのメイドさんに誘われちったぁ。
     ねー、ゆーごん?…あ、そっかぁ。どうぞ、入ってきていいよ〜」

――きょろきょろしながら部室に入る晴久

晴久 「ゆ、ゆーごん?あ…まぁ、そうです」
「へえ、それ面白そうじゃないですか」
ゆりえ 「えへへ、でしょでしょ〜?」
博哉 「あれ、ということは、文化祭当日は手芸部のスペースに行くってことですか?」
ゆりえ 「うん、そだよ〜」
寛子 「…いや、ちょっと待って。あんた美術部よね?しかも、副部長」
ゆりえ 「ほえ。そういや、そだね〜」
寛子 「そういや、って……。それ、副部長について言ってるのよね。どちらにしろ私、頭痛い…」

――静かになる部室

晴久 「……も、も、申し訳…ありません。手芸部の部長でありながら、そのようなことを…」
寛子 「大体…なんでこんなタイミングで頼みに来てるんですか。美術部に何か……あ!う、恨みでも?」
咲乃 「(晴久を鋭い眼光を向け)恨み……」
晴久 「う、恨み…だなんて、そんな…。ただ、僕は垣本さんに感謝しているのですが…」
寛子 「感謝?」
晴久 「え、ええ。先々月に使っていただいたあの着ぐるみ…ですね。
    垣本さんが着てくださったおかげで問い合わせが我が部に数件寄せられまして…」
「それで、まさか部員が増えたりとか」
晴久 「は、はい…。廃部寸前だったはずの手芸部に6名も新入部員が入りまして……」
「――ゆ、ゆりえ先輩すごいですね…!できれば、それを美術部に対して発揮してもらいたかったです」
ゆりえ 「や〜、ごめんねえ」
寛子 「ろ、6名って……」
「ということは、今年の美術部の2倍かぁ」
咲乃 「私と、喜戸くんと……あれ?」
「へ、僕もカウントしてるの、それ」
「当たり前じゃない。そうじゃないと、ね」
博哉 「…部長、もっと気を悪くするよ」
「……あ、ああ」
寛子 「それで、その、なぜそれが喫茶のお手伝いの話に?」
晴久 「あっ、実は、そのお礼に文化祭の際に使ってもらおう…と思いまして
    コーヒー1杯無料券をお渡ししたら、苦手、とのことで……代わりに着ぐるみを差し上げようと思ったのですが…
    部屋に置くスペースがないとのことでしたので…どうしようかと思ったところ
    メイド+着ぐるみ喫茶をお手伝いしてくださる…とおっしゃって頂けたので…その…」
ゆりえ 「やっぱ、プレゼントもらうより、体動かした方が性に合ってるしねっ」
寛子 「―――。ゆーりーえ?」
ゆりえ 「ほえ?」
寛子 「…部活の助っ人なら容認してきたけど……これは、何?」
ゆりえ 「何ってお手伝いだよ?」
寛子 「――――――」

「…うぬぬぬぬ」
「どうした、喜戸。筆を進めないか」
「せっ、先生…針と糸を手に取ってもいいでしょうかっ!?やっぱり俺、針と糸、もしくはミシンを触ってないと気が気で…っ!」

寛子 「―――いい加減にしろ(しなさい)!!」



To be continued.

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