ろこもこゆーすふる〜美術部の日々〜

  第7話 文化祭初日 それぞれの美学



new→《当台本を利用してくださってる方へ》




垣本 ゆりえ(かきもとゆりえ)女 高校3年生
明るく元気なスポーツ系天然娘。
中学時代は陸上部のキャプテンとして県内の大会を総なめにするほどの実力があったが
ひょんなことから美術部に入部したらしい。
朗には特に信頼されている。


大辰 咲乃(おおたつさくの)女 高校1年生
今年の新入生。
どちらかというと内気でおっとりしており、背が小さい。
割と毒舌(正直)。いや、もしかすると腹黒?スイッチがオンオフする。
第1話で入部を決めた。
※女子生徒(逸華のクラスの生徒役)と被りです。


赤星 寛子(あかぼしひろこ)女 高校3年生
美術部部長。基本的には、真面目な姉さん気質。
某有名芸術大学を目指し勉学に奮闘中。
絵は天才的に上手いといえばそうだが、色彩センスだけは素人が見てもまるでない。
ゆりえ曰く、抹茶色に赤紫を合わせてしまうほど。


己ノ瀬 來(みのせらい)女 高校2年生
本校一の美人。
色沙汰でいつも何かしら悩みを抱えている。そのため部では絵を描きながらストレス発散をしている。
普段はクール(気だるい感じ)だが、感情が高ぶると部内限定で甘えん坊になる。
しかし、考えていることが常に斜め上ではある。
※桐林 逸華と被りです。


新垣 博哉(にいがきひろや)男 高校2年生
次期部長候補。見た目は爽やかな真面目な青年。
恐らく部で一番の常識人。しかし、女性陣の勢いに毎度負けている。
さらに、泉のテンションについていけず若干苦手意識がある。


喜戸 泉(きどいずみ)男 高校1年生
今年の新入生。パワフルで熱い青年。
本人は至って真剣なのだが、よく周りには変人扱いされる。
実はそれには彼の趣味に問題があるかららしい。
その趣味とは、被服(衣装デザイン)である。
理由が不可解だが、彼も第1話で入部を決めた。


奥 要(おくかなめ)男 27〜29歳くらい 教師
美術教師で美術部の顧問。
普段は涼しげな顔をしていて何を考えているのか分からないが
中身は完全なる熱血教師。
そして、話し出すと意外とおしゃべりで本人無自覚であるがナルシストでもある。
ちなみにボケもツッコミもでき、スルースキルが高い。
最初の台詞にとぶ


右京 朗(うきょうほがら)男 高校2年生
童顔で実年齢よりも幼く見られ、男扱いしてもらえないのが悩みの青年。
そのため、自分=女というキーワードにやたら敏感。
男らしく振舞おうとしているが、微かに小心者の要素が見え隠れしている。
一度退部していたが、第3話で踏ん切りがつき再入部を果たした。
ゆりえを尊敬しているが、泉に少々厳しい。


女 3●歳 教師
家庭科教師。來のクラスの担任。
服飾に命をかけ、間違った方向にお上品な色気を捻り出しているのある女性。
落ち着いているように見えるが、割と打っ飛んだ思考回路の持ち主で
女子生徒には忠誠心、男子生徒には気品を求めている。
恐らく、要に興味を持っている。
※己ノ瀬來と被りです。
最初の台詞にとぶ





4:4:0若しくは3:4:1台本(所要時間約20分弱)

<キャスト>
垣本 ゆりえ       (♀):
大辰咲乃/女子生徒   (♀): 
赤星 寛子        (♀):
己ノ瀬 來/桐林 逸華  (♀):
新垣 博哉        (♂):
喜戸 泉          (♂):
奥 要           (♂):
右京 朗      (♂or不):


※來の台詞は少なくなりますが、逸華との被りなしで4:5:0なども有だと思います。











<前回までのあらすじ>

泉ナレ 「ナイスな先輩方に惹かれて入部した美術部。
     もう入部して2ヶ月近く経ちますが、1週間活動停止や久野[くの]先輩騒動などと、揉まれつつも、活発的に活動しております!
     前回は、文化祭で展示する絵が実は自分、白紙でして!いやぁ、参った参ったってことで
     ゆりえ先輩共々叱られてしまいましたね!当たり前ですね!
     さーて、今回のタイトルには文化祭の文字があるではないですかー!これは、お話に期待しちゃってもいいかもですね!」





◆美術部部室 文化祭展示物締め切り当日

寛子 「はい、喜戸くん。そこもうちょっとだから、手を休めないで!」
「(眠そうに)う、あ、は〜い」
寛子 「ゆりえ!あんた何突っ伏してるの!」
ゆりえ 「ほええ…。寛子が本気だぁ…」
寛子 「本気も何も、ここ6時半で閉まるでしょ?合同画はできたんだから、個人画できてないとおかしいでしょう!ほら、進めて!」
ゆりえ 「ほわーっ!」
咲乃 「いつも以上に部長が厳しいですね…」
博哉 「そうだね。ここまで来て終わってないだなんて、うちの部としては珍しいからね、寛子先輩が部長になってからは」
咲乃 「そうなんですか〜。なぜ今回はこんなことに?」
博哉 「あー…それは…」
「まさかのアクシデントと、あの、喜戸ってやつのせいかな」
咲乃 「ああ…。……ん?」

――何か黒い影が部室のドアの向こうから覗いている

咲乃 「(小さく)……あ…。また、あの目に優しくないおばさんが見てる……
    (鋭い眼光で返す)誰を見てるんだろう…、朗先輩…かな」

――部室のドアが開く

「寛子先輩、要、やっと見つけましたよ。文化祭関連で席を外していたみたいで」
寛子 「そっか…。文化祭の出し物ギリギリになりそうって伝えてきた?」
「はい。そしたら、9時まで部室開けといていいから、ラストスパートかけろって言ってました」
寛子 「9時…、よ、良かった…」
「お。9時ならどうにかなりそうですね!ほら、喜戸、眠いのは分かるから頑張れ!要先生が助け舟出してくれたぞー」
「(こつかれて眠気がとび)ぬぁっ、はい!全力で乗り込みます!」
「はー、こいつ、急にペースが速まったよ」
博哉 「本当だ…。しかも、かなり眠かったみたいだな。最後の力を振り絞ってるっていうか、精神削ってそうだ」
「(軽く笑う)この子は、締め切りと戦ってるからね、それも2つ。それがこの子の気力を繋ぎとめてるのよねー」
博哉 「それって、どういうことだ?」
「知らない。まぁ、そのうち分かるんじゃない」
博哉 「そ、そうか。なんだか悪い予感しかしないな」
「僕もだ…」
寛子 「あ、そういえば、大辰[おおたつ]さん!」
咲乃 「はっ、はい」
寛子 「いちおう、部活は9時までやるつもりなんだけど、さすがに遅いよね?夜道危ないし、先に片付けて帰ってもいいよ」
咲乃 「いえそんな…まだ先輩も、喜戸くんも作業中なのに」
博哉 「いいよ。大辰さんは自分がやるべきことはやったんだろ?
    明日から展示と飾りつけ、それにクラスの催し物だってあるし、ゆっくりしたら?」
寛子 「そう。博哉の言うとおりだから気にしないで」
咲乃 「わかりました…。ただ、その私は帰りますが、朗先輩をよろしくお願いしますね。では、お疲れ様ですー」
寛子 「はい、気をつけてね、お疲れ様〜。え、朗くん??何だろう…何かあったのかな。
    まぁいいや、とにかく…二人の作業を見守ろっか」
「??ええっと、そうですね。見てないと絶対眠りこけますからねー」
博哉 「ははは、そうだな。でも、要先生の一言で目は覚めたんじゃないかな」
ゆりえ 「(真剣に作業をしながら)くーじ、くーじ、くーじ……」
「(凄いスピードで作業をしつつ)芸術はフィーバーだぁぁぁぁ!」
寛子 「(笑って)…確かにそうみたい」


◆3日後 文化祭当日 美術部部室

「おっし。美術部部員諸君、よく頑張った。正直なところ、2作品落とすかと思っていたが、上手く踏みとどまったな」
ゆりえ 「要〜!もう私駄目かと思ったんですよ〜」
「ホントおまえは、俺が最後に見たときは全然だったな。それもこれも、部長も含め、おまえたちのおかげだな」
寛子 「え?いえ、そんな…」
博哉 「違いますよ、なぁ、朗」
「そうです。本気で作業を続けたのはゆりえ先輩と喜戸です。僕たちはただ二人が描いていたのを見ていただけです」
「そう…か。いい仲間を持ったな、垣本[かきもと]も、喜戸も……。ん?」
咲乃 「あれ。さっきまでいたのに、喜戸くんがいません」
ゆりえ 「ほえ?確かに隣にいたはずなんだけどなぁ」
「あいつは、文化祭当日に何をやってるんだ…。喜戸がどこに行ったか分かるやついるか?」
咲乃 「さ、さぁ…」
「あー喜戸くんなら、私のクラスのファッションショーの準備に行ったんじゃないかと」
ゆりえ寛子咲乃博哉 「えっ?(ほえ?)」
「ふぁ、ファッションショーって……。あいつ、あれだけ美術部の作品作りに追われてたくせに、服まで作ってたのか!?」
「そうよ。いつも美術部が終わった後、衣装の素材探しと、製作作業を深夜までやっていたらしくてね。
   最終的には、どちらの作業にも支障を来たしちゃったわけだけど」
ゆりえ 「知らなかったぁ。喜戸っち、まさかそんなことまでやってたなんて〜、かっくい〜!」
寛子 「でも、どうするの?いちおう、喜戸くんにもここに居てもらわないといけないんだけど…」
咲乃 「交代でしたよね、美術部にいるのって」
寛子 「そうなんだけど、喜戸くん、忘れちゃったのかな…」
「はー…仕方がない。僕が呼んできます。他の部員が抜けたら、その場でデッサンできる部員が減っちゃうんで」
博哉 「いや、いいよ俺が呼ぶ。己ノ瀬[みのせ]のクラスのファッションショーだろ?ちょっと思うところがあるから、お前はいいよ」
「なんだよそれ。納得いかないな」
ゆりえ 「じゃあじゃあ、二人で呼んできたらいいよ〜。あ、それか私もついて行こうか?」
博哉 「ゆりえ先輩も……。まぁ、いいか。一緒に行きましょう。あとは部長たち、よろしくお願いします」
寛子 「わかった。部員が一時的に減るけど、[らい]も大辰さんもデッサンいけるし、もしもの時は…」
「ああ、俺は暫くいるからな。それまで手伝うから安心しろ」
ゆりえ 「了解です〜。んじゃ、行ってきま〜す」


◆2-B3 ファッションショー会場

――高校にしては豪華に飾られた会場に圧巻される3人

「な、な、なんなんだ、この[きら]びやかな会場」
博哉 「元々、ここ、旧体育館なんだけど……ここまでできるもんなんだなぁ……」
ゆりえ 「ほえー!何から何までキラキラだよぉ」
「でしょう?これは私と生徒たちの努力の結晶の賜物なのよ。そう、これは決して崩されない、ダイヤの如く…」
ゆりえ 「あー。桐林先生。そっかぁ、來ちゃんの担任って、桐林先生だったんだねぇ」
「ああ。いらっしゃい。そう、貴女は垣本さんじゃない。本校の誇るスポーツ万能少女。
    そして、二人は……あらん、良い素材を持って来たのね」
博哉 「し、しまった!」
「そ、素材ってなんだ?なんなんだぁ!?博哉説明しろよ!」
博哉 「違う、俺は違う、違うって!逃げるぞ!」
「お、おうっ!」
「待ちなさい。そこ、閉めて」

――会場の扉に鍵かかかる

女子生徒 「先生、閉めました」
「有難う」
「閉められちまった……!こ、この先生何者なんだ??」
博哉 「何者っていうか、その……家庭科の先生」
「俺、担当してもらったことないんだけど……」
ゆりえ 「桐林先生は、奇数クラスしか持ってないからねぇ。知らないのも無理もないと思うよぉ」
「……」
「さぁて、どうしてくれようか。博哉くんはどうも、去年はお世話になったわね。
    そして、隣の子、廊下では見かけたことがあるんだけど、すごく可愛らしい子ね。お名前は?」
「……う、右京朗です」
「まぁ、お名前も素敵なのね。じゃあ、準備をしましょうか。喜戸、喜戸くん?そちらの作業をとめて、出ていらっしゃい?」
「(遠くの方から)はーい!只今!」
「はぁい、いらっしゃい。博哉くんと、そして今年の新たな逸材の朗くんが来てくれたから、衣装を合わせてくれないかしら」
「合点承知ですよ〜、先生〜!……って、えー!?
   ゆりえ先輩に、新垣[にいがき]先輩、そして朗先輩まで来てくれたんですかぁー!!
   俺、テンション上がってきたんですけど!
   どうです?この会場、カラーコーディネートは俺が担当したんですよぉ。
   煌びやかな中にもシックさを与えてバランスとるのには、結構苦労しましたぁ!」
ゆりえ 「わぁ、喜戸っちだぁ。喜戸っち、こーんなことまで出来ちゃうんだねぇ。私、尊敬しちゃうよぉ」
「いえいえいえー、それほどでもないですよ〜!
   さぁて、博哉先輩だけでなく、朗先輩まで衣装合わせしてもいいだなんて、もしかして先輩、機嫌が良かったりとか……!」
「するか!それに僕は、ファッションショーに参加するなんて、一言もいってないぞ!」
博哉 「お、俺もだ……。今勝手に、桐林先生が、俺たちを閉じ込めて強制的に参加させようとしたんだ」
「強制的だなんて、ひどいわね〜博哉くん?貴方、去年は楽しそうにしてたじゃない」
博哉 「してません!」
「そう……。じゃあ、今年こそはむしろ、貴方から望むようにしてあげるわ!行きなさい、B3組女子!そして喜戸くん!」
女子生徒 「はい、逸華[いつか]先生!逃がしはしませんよ!」
「わ、わかりましたぁー!すみません、先輩ー!」

――1人の女子生徒を筆頭に10人近くの女子たちが2人を囲む

女子生徒 「さぁ、逃げられませんよ。ここは旧体育館、出入り口以外の鍵は壊れているし、窓という窓は開かない。
       それにほとんど壁だらけで、このセッティング……。どうします?」
博哉 「……」
「……」
「では、行きますよ!せーのっ!」
女子生徒 「えい!」
博哉 「た、助けて〜!」
ゆりえ 「………ほええ〜。女の子だけで担いで行ったのに、もう舞台裏に消えちゃったぁ」
「ふふふ。どのようなことが起こっても、対応できるように仕込んでるのよ、うちの生徒たちは。
    はぁー、楽しみね、どのように仕上がる、か」
ゆりえ 「そういえば、どんな衣装にしたんですかぁ」
「え?女性的な衣装に決まってるじゃない。うちのクラスの男子生徒は皆、それぞれの個性に合わせたスペシャルな衣装よ」
ゆりえ 「ほえー」


◆その頃 美術部部室

寛子 「……このような似顔絵ですみません。あ、いえいえ、気に入っていただけたのなら、とても嬉しいです。
    明日もやってますので、良かったら、お友達を誘っておいでください」
「11時、か。そろそろ来訪者が増える時間帯だな。まだ、喜戸は呼び戻せてないのか」
寛子 「そうみたいですね。余りにも遅すぎるので、行ってみませんか?先生が行った方が、きっと、すぐに解決すると思うので…」
「そうか?では、済まないが少し時間をくれ。何か問題を起こしていたら、俺が早々に止めてくる」
寛子 「はい、よろしくお願いします」


◆再び 2-B3 ファッションショー会場

「離せ!離せって!!」
「だいじょーぶですって!桐林先生の前や大勢の人の前で引ん[]かれるよりマシです!恥ずかしくないです!」
「そういう問題じゃない!女装なんて……女装なんて……この世の何よりも大嫌いだぁー!!博哉お前もそうだろ!」
博哉 「(乾いた笑い)は、ははは…」
「ほぉら!新垣先輩は大人しく着替えられてるじゃないですかー!ここは抵抗しちゃ駄目です、ほんの少しの辛抱なんですからー!」
「はい、はい。そうよ、ほんの数分の着替え、そして、お昼からのファッションショーでウォーキング。たったそれだけじゃない?」
「ぎゃぁ――――!」
「あー、ジタバタしないでくださいよー。桐林先生は、カーテンの向こうじゃないですか!」
「はぅ……(首を垂れて気絶)」
博哉 「……あ」
「……あぁっ!」
「あまりにも衣装が素晴らしかったのかしらね、気絶しちゃうなんて」
博哉 「ち、違う…と思います……」
「そう」
ゆりえ 「むむむ。ほがらんや、博哉が綺麗になって出てくるのは、確かに面白いなぁって思うけど
     二人がそんなに嫌がってるのなら、どうなんだろぉ……」
「垣本さん?」
ゆりえ 「ほえ?」
「人生にはね、嫌でも通過すべきチェックポイントというものがあるの」
ゆりえ 「チェックポイント…?」
「そう。それは、嫌でも体験しておけば、後々、その子自身の糧になり、いずれ大人になったときに
    『ああ、あの経験があったからこそ、苦しみをものともしなかったんだな』とか
    『ああ、あの体験があったからこそ、ここ一番で実力が発揮できたんだな』なんて、実感する日がくるようになるものなの」
ゆりえ 「き、桐林先生すっごい……!じゃあ、そのために今乗り越えようとしてるんだぁ」
博哉 「(わ…、ゆりえ先輩まで洗脳したよ…。ってまぁ、それは簡単か)」
「ご理解いただけた?ふふ。では、続きをよろしくね、喜戸くん?」
「ラジャーっす!」

――会場の入り口のドアを叩く音が響く

「ん?」
博哉 「!」
ゆりえ 「?」
「な、何??」
女子生徒 「だ、誰ですか!」

――ついに鍵が壊され、ドアが開く

「……鍵が本当にかかっているとは……。(煌びやかな会場を見て)なんだこれは……。おい!喜戸、喜戸はいるか!」
ゆりえ 「あー、その声はー、要だぁ」
「か、要先生ですか?」
女子生徒 「かっ、要先生が来られた模様です!」
「なんですって!!…ちょっと表に出てくるわ」
「(会場を見渡して)……ここは、旧体育館だったはず……」
「要センセ。ようこそいらっしゃい、ファッションショー会場へ」
「えーと…桐林…?先生?」
「あらやだ。疑問系だなんて。それに私のことは逸華先生って呼んでくださいって言ったじゃないですか」
「は、はぁ……。あっ、それはともかく、うちの部員は知りませんか?恐らく4名ほどこちらに来ているはずなのですが……」
ゆりえ 「要ー!」
「ん?おお、ゆりえか。新垣[にいがき]と喜戸と朗はどこだ?」
ゆりえ 「ステージの裏だよぉ」
「なんだ、すぐ近くにいるのか。えらく戻ってこないから、何事かと思って探し回ったぞ。
   いちおう、文化祭初日は部の活動を優先してもらいたいからな……。
   (ステージ裏に向かって)おい、お前たち、さっさと部室へ行くぞ!」
博哉 「(も、戻りたいけど出来ない場合は……)あっ、おい。右京?右京?」
「(少し考えて)うーむ…。(大きく)要せんせーい!もーちょっと待っていただけませんかーっ?」
「なんでだ!おまえが、こっちの催し物に参加するなど聞いてないんだが」
「いやぁ、だって、これから桐林先生の世紀のファッションショーですよ??
   将来ファッションデザイナーになる人間は、まずここから始めないと!」
「は?何を言ってるんだ。お前はその前に美術部部員だろ?」
「で・す・が、今は私の貴重な助手なんですよ?邪魔しないでくださいま・す?(2回大きく手を叩く)」

――ステージの幕が開く

女子生徒 「おとぎ話の世界へようこそ。本日のオープニングアクトに2名ご紹介致します」
「(意識が戻って焦る)……ん?い、いや、ちょっと!」
博哉 「(声にならない叫び)」
ゆりえ 「わぁ〜!ほがらんかあいい!!博哉もきれーっ!」
「…………」
「ふふっ。どうです?素晴らしいでしょう?」
「……俺としたことが、完敗です……。なんて、言うとでも思いましたか?お前たち、今だ!いますぐ逃げろ!」
「え、えっ!?」
博哉 「(一瞬だけ落ち込んで)……格好はこの際気にするな!って難しいけど、逃げるぞ!」
「お、おう!」
「ままま、待ちなさい!私の逸材……あっ(つまずいて転ぶ)」
女子生徒 「ああっ、逸華先生!大丈夫ですか??」
「逸華先生。あいつらは、俺の"生徒"ですので、この辺りにしていただけませんか。
   いくら文化祭でも、あれは生徒たちの心の傷になる。――そうでしょう?」
「逸華、先生って呼んでく、れ、たぁ………(脱力)」
女子生徒 「喜ばしいことです!先生!」

――女子生徒たちが脱力した逸華を運んではける

「…………なんだったんだ。あれは……」


◆20分後 美術部部室

――着替えた博哉と朗が現れる

博哉 「……すみませんでした」
寛子 「いや、悪いのは二人じゃないよ。むしろ悪いのは……」
「喜戸だな」
「え!俺ですか!?」
「(呆れて)お前だ馬鹿野郎。人の話も聞かずに、勝手に出て行くな。
   自分のクラスの催し物で外出するならまだしも、だいたいおまえは……」
寛子 「私が悪いんです。喜戸くんが話を聞いてないからとかじゃなくて、多忙を理由に
    私がしっかり部員に交代制だってことを言ってなかったから、こんなことが起きてしまったんです。全て部長の私の責任です…」
ゆりえ 「違うよ!」
寛子 「!」
ゆりえ 「寛子は、模試や絵画教室で忙しいのに最後まで私とか喜戸っちを見守ってくれたよね?だから、そんなことないよぉ。
     部長として色々なこと頑張ってたし、泣きそうな顔しちゃ駄目だよ?」
「そうですよ。今日は楽しい文化祭、それに3年生にとっては最後の大切な文化祭じゃないですか」
咲乃 「部長、元気を出してください」
寛子 「………」
「赤星、まだ文化祭は終わってないぞ。美術部だけじゃない、クラス、そして学校全体のイベントは、まだこれからだ。
   卒業式で泣け、文化祭は笑顔の行事だ」
寛子 「……はい」
「よし!美術部の催し物はこれからだ!改めて頑張りましょう!」
ゆりえ 「おー!」
「(蹴りを入れて)喜戸は反省しろ!!」
「はっ、はい!すみませんでしたぁぁぁ!」
皆 「(笑う)」




To be continued.

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