たとえば、青年 田渕雅貴の場合
―for example,Masaki―
new→《当台本を利用してくださってる方へ》
田渕 雅貴(たぶちまさき)男 23歳 大学3年生
単純で我が道を行くタイプの青年。悟の友人。
派手な格好を好んでいるらしく、自分磨きに余念がない。
かなりオバカだが、名前を書いたら受かると言われた高校から二浪し
難関大学に合格している。
雪野 悟(ゆきのさとる)男 23歳 社会人
割と冷静な青年。雅貴の友人。
思ったことで言うべきことは、包み隠さず言ってしまうために
発言には時折トゲがある。
それを買われてか、会社では新人ながら人事部に所属している。
2:0:0台本(所要時間約10分)
◆冬 某県 飲食店前
雅貴 「よ!久しぶり〜!元気してたかー?」
悟 「久しぶり、まあまあだよ。ふー…今日も寒いな。中入るか」
雅貴 「おう、入ろ入ろ」
◆飲食店内
悟 「でさ、こんな雪の中、なんで俺を呼んだわけ。…しかもファミレス」
雅貴 「そりゃ、悟なら黙って聞いてくれるかなぁってさぁ。
そんでもって、ファミレスはただ俺が、ここのクラムチャウダーを食いたかったってだけの話なんだけど」
悟 「ったく、他の奴にしろよ。昔っからおまえめんどくさいな。ファミレス肩身狭くねぇの?」
雅貴 「は、あったけーじゃん?」
悟 「…もういいや。で、話って何」
雅貴 「お、よくぞその話を振ってくれました!耳かっぽじってよーく聞いてくれよ」
悟 「へいへい」
雅貴 「俺、ここ数年、できねぇの。全っ然」
悟 「何が」
雅貴 「だから、彼女」
悟 「ほー」
雅貴 「な、なんでそんなに興味なさそうなんだよ!」
悟 「そもそも、おまえの話が面白かったことなんか一度もない」
雅貴 「ひ、ひっでぇな!」
悟 「アリガトウゴザイマス」
雅貴 「褒めてねぇよ!……と、とにかくさ、高校を最後に彼女できてないのって、おまえ知ってるよな?」
悟 「確かそうだったんじゃねぇ?」
雅貴 「確かじゃなくてそうだったんだ!それで、お前に相談したいのが…ど」
悟 「どうやったら、彼女ができるんだ?ってか」
雅貴 「……ちょ、すげぇ、おまえ新手のエスパーか!」
悟 「なんだよ、それ。とにかく、聞きたいのはそういう類のことなんだろ?」
雅貴 「そうだ!だからさー、悟。いや、悟大明神様!手を合わせて拝むから、何か良いアイデア伝授してくれねぇかな」
悟 「手を合わせられたら余計にめんどくさい」
雅貴 「まじかよー。俺、悟大明神に何か伝授してもらえなかったら、一生ここでおまえの○○とか○○とか言いふらし続けてやるー!」
悟 「は!?それだけはやめてくれ、話なら時間の限り聞いてやるからさー…」
雅貴 「よっしゃぁ!助かるぜ、悟大明神!!」
悟 「と、とりあえずは、その悟大明神ってのはやめような」
雅貴 「え、結構語呂が良かったのに」
悟 「…語呂が良くても、俺が気分悪いよ。で、彼女だっけ?」
雅貴 「そう、彼女。高校卒業してもう5年も経つのに全くできる気配すらねぇの!それっておかしいんじゃないか?」
悟 「別に、30過ぎてもいない人はいないしさぁ。普通じゃね」
雅貴 「普通か!?5年が普通。ハッ、よく言えたもんだよ。高校時代全く彼女作ろうとしなかった奴がさぁ」
悟 「それ、相談に乗ってもらっている人間の態度かよ。
ひとつ言わせてもらうけど、周りに乗せられて、無理やり彼女を作ろうとする方がよっぽど馬鹿だと思うけどね」
雅貴 「………」
悟 「図星か」
雅貴 「図星じゃねぇー!」
悟 「さいですか」
雅貴 「……そ、その。乗せられてちゃ駄目なのかよ」
悟 「まあ、乗せられてスムーズになるってこともあるかもしれないけど、その気じゃないのに、彼女作ったってつまらなくないか」
雅貴 「その気だからいいんだよ!」
悟 「へー。そしたら、罷り間違って彼女になった子、可哀想だな」
雅貴 「かわいそくねぇよ!彼女になったら大切にしてやるよ!」
悟 「……ふーん」
雅貴 「またその反応かよ……」
悟 「なんでおまえに彼女が出来ないのか、ひとつ原因が見えてきた」
雅貴 「おお、まじかよ!げ、原因ってどういうことだ??髪型か、服装か、職業かぁ!?」
悟 「ふー」
雅貴 「もったいぶらずにさぁ。ずずいっと、ほら、話せよ〜」
悟 「女の人に対して上から目線。きっとお前、女性に対して俺が支配してやるとか思ってんじゃねぇ?
あと、その変な見栄っ張り。男が見ても気持ち悪いよ。もっとセンスのいい格好したら?」
雅貴 「…………あ、相変わらず言わせたら傷つくこと言うな…」
悟 「俺を相談相手にしたおまえが悪い」
雅貴 「お、おう。というか、お前、なんで見透かしてんの、俺のこと」
悟 「見透かしてるっていうかさ。お前の言動と態度が単純なだけ。せっかく医大に受かったくせに頭悪すぎるだろ」
雅貴 「俺、そんなに頭良くねぇよ……」
悟 「まぁ、二浪したしな。でも、かなり頑張ってる方か。あ、そういやお前、どの診療科に進むつもりなんだ?」
雅貴 「内科!」
悟 「へえ、内科か。最近、競争率激しいって聞くけど」
雅貴 「その競争を勝ち抜いた男こそ、かっこよくないか!
しかも、内科は男女ともに人気ナンバーワンだし、出会いがあるかもしれねーじゃん!」
悟 「そこ基準なのかよ……。あ、もしかしてお前、モテるかどうかを基準にして医大受験を決めたな」
雅貴 「そうそう」
悟 「単純すぎるにもほどがあるだろ……。おまえさ、もっとやりたいことないのか?」
雅貴 「そうだなぁ…。今はとにかく彼女が欲しいかなぁ……」
悟 「頭の中、女のことでいっぱいかよ……」
雅貴 「え、お前は彼女いらねぇの?」
悟 「いや、もういらねぇよ。……既に、いるし……」
雅貴 「っておい!彼女いたのかよ!し、知らなかった…いつの間に彼女とか作ってるんだよ!
どんな子だよ、写真とかないのか?写メとか!」
悟 「めんどくさいな……。あと、テーブル揺らすな。見せるから、写真なら…」
――悟、写真を見せる
雅貴 「お、お、おおお……。なんだか地味だな……」
悟 「地味じゃねぇ。こういうのは、大和撫子って言うんだよ!」
雅貴 「へー大和撫子、へー彼女自慢ですか、そうですか」
悟 「うるさいな!少なくとも俺がそう思ってるから、いいの!」
雅貴 「はぁー、お熱いことお熱いこと。で、どうやって手に入れたわけ?」
悟 「手に入れ……。っておまえ、人の助言聞いた後なら、考え改めないか」
雅貴 「えー、こんなに拝み倒してるのに??」
悟 「手が拝んでようと、表情にすら誠意がないから教えない」
雅貴 「まじかよぉ」
悟 「ああ、まじだよ。それでさ、女は金で釣れるとか、肩書きに弱いとか思ってたら、結局ろくでもない相手に振り回されるだけだぞ」
雅貴 「なんだと……。あークソッ、これだから大明神は…」
悟 「いや、だからそれはおまえが単純なだけ…」
雅貴 「だー!だったらどうすればいいんだよ!」
悟 「そんなこと言われてもな……」
雅貴 「あーっ!」
悟 「突然何」
雅貴 「この前、合コンで知り合った女の子からメール来てんだけど!」
悟 「へえ、いいじゃん。なんて来てた?」
雅貴 「えーとな、『金曜の合コンすっごく楽しかったよ!本当にアリガト!』……ほらぁ、俺まだ大丈夫じゃん!」
悟 「ふーん。まだメールが来るだけいいんじゃね?」
雅貴 「おう。あっ、あと質問までついてるぞ?『それでちょっと雅貴君に質問なんだけど、本当に医大生な…』……はぁー!?」
悟 「お前、それ、医大生かどうか、女の子に疑われてるぞ」
雅貴 「はぁー…そんなに俺が馬鹿そうに見えますか、そうですかぁ〜…」
悟 「というか、馬鹿以前にお前の雰囲気に問題があるとか?」
雅貴 「雰囲気?」
悟 「うん。女の子的に近寄りがたいような…初めから狙ってる顔をしてたりさ」
雅貴 「……とっ、ということは、俺が女の子の胸でけぇな〜とか、脚がたまらんとか思ってるのも、全てバレバレってことかぁ!?」
悟 「あー…、確かにそういうこと、顔にマジックで書いてあるわな」
雅貴 「は!?ま、まじかよ?ゆ、油性マジックってどうやって消えるんだっけ!?」
悟 「いや、それ例えだから。っていうか、油性とか一言も言ってないし…。
はー俺も疑いたくなってきたわ、お前が本当に医大生なのか」
雅貴 「胸と脚信者が、医大生で何が悪いっ!!」
――悟の携帯が鳴りだす
悟 「あ、ごめん。彼女からだ。そろそろ俺行くわ」
雅貴 「…って、おいおいおい、まじかよー。彼女持ちは毎日充実してそうで羨ましい、なっ!頑張れよー。それでまた相談乗れよー」
悟 「何を頑張るんだよ……。じゃあな」
――外に出て、携帯に出る悟
悟 「あ、姉さん??雅貴に会ってきたよー。うん、うんうん。なんか姉さんの写真見せたら、地味とか言ってた。
ふっ、しょうがないよ、それに関しては。あーそれで、言われたとおり会話も録音したから。
うん、そうそう。それは問題ないよ。……は、今度は俺、文字起こしとか手伝わないからね。
……いやだって、めんどくさいってそういうの。
それじゃ、ダメ男特集上手くいくといいね、きっと最後の方に入ってるのとか笑えるよ、うん。
今日も徹夜なんだろ?編集者は大変だな、ホント。無理しないようにね」
end of the story.
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