たとえば、彼女がアイスコーヒーを頼んだら(仮)

 ―For example, when she asked for iced coffee―




new→《当台本を利用してくださってる方へ》




草刈 志穂(くさかりしほ)女 25歳 OL
恋に恋する恋愛中毒の女の子。
男性の前では可愛い子であろうとしているため、常に恋愛的に戦闘モード。
喜怒哀楽が激しく、たまに言動が演技くさい。



及川 伶子(おいかわれいこ)女 25歳 社長秘書
宙に浮いているかのようにおっとりしている女の子。
自分のペースは変えない天然辛口。
男は追ってくるべきだと思っている。志穂もそうだが、伶子も十分思考回路が斜め上である。










0:2:0台本(所要時間約10分)

<キャスト>
志穂(♀):
伶子(♀):










◆昼間 とある街角の喫茶店

志穂 「伶子〜?ねーえ、聞いてったら、れ・い・こぉ〜!」
伶子 「どうしたの?追加でアイスコーヒーでも注文する?」
志穂 「……あのねー、あんたふざけてるの」
伶子 「うーうん、ふざけてないけど。別に普通だよ?それでどうかしたの?」
志穂 「(暫く間の後イライラしつつ)えーとねぇ、聞いてた?今まで散々語った私の……」
伶子 「きりっとした顔の、180センチ以上の長身やや痩せ型イケメン。勉強できなくても頭が良くて、スポーツ万能で
    メガネが似合って、大手企業の御曹司で、私のこと大好きで、私以外の女に目をくれず、私のために尽くしてくれて――」
志穂 「(台詞に割り込んで)はいはいはいはい!ストップ!ストップ!ストーップ!」
伶子 「ふぅ、疲れた。ここまで言わせないでよ」
志穂 「いや、私が言った好みの男性のタイプを一言一句間違わずに言おうとしないでってば」
伶子 「瞬間記憶能力があるから、つい」
志穂 「つい。じゃないから〜。聞いてて恥ずかしくなったんだけど!」
伶子 「恥ずかしげもなく言ったのは志穂じゃない」
志穂 「そ、そうだけどさー。人から言われると恥ずかしいというか、何と言いますか!」
伶子 「まあ、恥ずかしいよね。赤面だよね。全国のイケメンに顔向けできないよね」
志穂 「そういう問題じゃなーい!私だってね、私みたいな女にだってね、男を選ぶ権利はあるんだよ?」
伶子 「でもその条件じゃ、そもそも彼氏できなさそうな気がする」
志穂 「ええー?できるし!存在するって!じゃないと私が変な高望みしてるみたいじゃない!この際、日本国内じゃなくていいわよ!
    アメリカンでもヨーロピアンでもインディアンでも国籍問わないから、条件満たしてるイケメン、私の元へカモーン!!」
伶子 「やっぱりアイスコーヒー頼んだほうがいいよね」
志穂 「はぁ!?」
伶子 「だから、レイコー」
志穂 「あ、ああ。大阪弁って言いたいわけね」
伶子 「そういうこと(ジュースを一気飲みする)」
志穂 「でさー、今度、大学時代の友達と一緒に逆ナンしに行こうって話になったの」
伶子 「(むせる)」
志穂 「もうね、[]り取り見取りらしいの!こうやって、ざざざぁっとイケメンが歩いてる様を想像するだけで楽しくならない??
    ぞくぞくするっていうか〜、いやぁ〜!!」
伶子 「そう簡単にいくのかなぁ」
志穂 「上手くいかないかもしれないけど、こっちは本気よ!獲物にはいつ何時だって容赦しないの!
    なんていっても、私は大草原を駆け巡る狩人なんだからね!」
伶子 「なるほどねー。ただ、男相手に自分から躍起になるより、むしろこっちに迫ってきて欲しいかな、私は」
志穂 「えー?何〜?ホルモンむんむんお姉さんアピール?今時そんなの流行らないよ!
    こっちから攻めていかないとイケメン取りこぼしちゃうじゃない」
伶子 「うーんと、だから、そのイケメンが全力で頭下げるくらいになんないと駄目だと思うよ〜」
志穂 「じゃあ、どうやったらそういう風になるって思ってんの?」
伶子 「まず美貌でしょー」
志穂 「うん」
伶子 「スタイルでしょー」
志穂 「うんうん」
伶子 「しぐさとか、匂いとか。あとはそう、目使い」
志穂 「ふーん。話し方とか工夫しないの?」
伶子 「そういうのはそんなに[こだわ]らなくてもいいと思うよー。だって、見た目良くないとそういう気持ちになってもらえないはずだし」
志穂 「そうかなぁ」
伶子 「そうだよー。だから志穂みたいに猫なで声で甘えるのって、飽きられちゃうんじゃないのかなぁって」
志穂 「私そんなに猫なで声ー!?」
伶子 「うん。面白いくらいに男の人の前だとそんな感じ。(店員に)あ、アイスコーヒーお願いしまーす」
志穂 「(ぶりっ子ぎみに)え、えっとぉ、私はアップルティーをくださぁい!……はっ」
伶子 「……」
志穂 「……」
伶子 「ね?」
志穂 「……うぅ」
伶子 「正しくは猫なで声じゃなくって、ぶりぶりしてるっていうか〜」
志穂 「ぶりぶりしてて、悪うござんしたよぉ!」
伶子 「しかも、皆この状況見てるのに、今更可愛い子ぶってもねぇ。何だろうそれ、反射的にやっちゃってそうだよね」
志穂 「……うん、そうだよ。反射的、ほとんど無意識だよぉぉぉ……!体が勝手にそうするんだよぉぉ!!
    せっかく女の子に生まれたんだから色目くらい使ったって[ばち]当たらないでしょー!?
    そうじゃないと生きてる意味ないんじゃないの!?そうじゃないのぉ!?」
伶子 「そうだけど、志穂のはちょっときついよ。あの店員さんも引いちゃってるはずだよー」
志穂 「嘘ぉぉぉぉぉ」
伶子 「どん まい」
志穂 「いやぁぁぁぁぁ」

――店員がグラスを持ってやってくる

伶子 「ああ、お兄さんどうも。そっちにアップルティーお願いしますー」
志穂 「………ああ、私、駄目だね」
伶子 「どうして?」
志穂 「一生の不覚!なんでこんなことに気づかなかったの!!誰よりも人当たり良くして生きてきたのに!」
伶子 「……へ?」
志穂 「ダイエットしなきゃとか、化粧うまくならなくちゃとか、可愛い格好しなきゃとか、お上品に振舞わなきゃ
    って考えてきたけど、全然男の人から見て可愛い子になれてなかったなんて!どうやったら人生挽回できるのよぉぉ!」
伶子 「今何歳だっけ?」
志穂 「25」
伶子 「うーん……。痛いね結構。高校生でもなかったことにできるかどうか、疑わしいかもしれないレベル」
志穂 「そこまで!?」
伶子 「うん。そのくらい」
志穂 「お、落ち込むわぁ……」
伶子 「救いなのは辛うじて20代だったってことだよね」
志穂 「うーん」
伶子 「……えーと、だったらこうしようよ?」
志穂 「え、何?」
伶子 「逆ナンする前にナンパされる練習しよっか」
志穂 「なんで?」
伶子 「狩るより狩られる精神って大切だと思うんだけど、いいと思わない?」
志穂 「思わ……ない」
伶子 「本当に相手から見て可愛いって思われてるか、これで一発で分かるよ?」
志穂 「そうかもしれないけど、私そこまで自意識過剰じゃないんだけど」
伶子 「(ぼそっと)十分自意識過剰なようなー」
志穂 「何か言ったー?」
伶子 「別に?そういうことだから、ちょっとやってみようよ。ナンパされる練習を」
志穂 「いや、だからさー、逆ナンはうちらが先行取ればいいじゃない?だけど、ナンパっていうのは完全に受身でしょ?」
伶子 「うんうん」
志穂 「せめて、こっちも何か行動がとれる手段に出たほうがいいと思うの。練習とかそういう問題じゃなくって」
伶子 「そっかぁ。じゃあ、逆ナンって荒っぽい感じがするから、正統派に合コンにしようよ」
志穂 「合コンかぁ。いいね。すぐに人数揃えられる?」
伶子 「それは無理かもー」
志穂 「へ、なんで?」
伶子 「だって、私、合コンで勝てそうなメンバー集めらんないからさぁ」
志穂 「何それ、イケメンぞろいってこと?」
伶子 「違うよ。イケジョだらけってこと」
志穂 「(笑いながら)イケジョって何よ〜!美人だらけってことかー。その美人たちは彼氏くらいいるんでしょ?」
伶子 「それがね〜、いないとかいうんだよ」
志穂 「嘘ー!絶対その子たち嘘ついてるって!彼氏いるくせに遊んでるだけだって!」
伶子 「そうかなぁ。そうだったら、合コンとか男とかイケメンとか、そういうフレーズを出した瞬間、猛獣化するのを見たらよく分かるよ、そんなの」
志穂 「……平然と言うなぁ」
伶子 「だから、合コンメンバー集めるのは志穂ね」
志穂 「えー!嫌だよ。そんなめんどくさいの!一緒に合コンする女の子はどうでもいいから、イケメンを集めようよ!」
伶子 「それはどうやって?」
志穂 「うーん。伝手[つて]辿[たど]って!」
伶子 「志穂にそんな伝手あるの?」
志穂 「ない!」
伶子 「あっさり認めちゃった」
志穂 「うん!だからさー、伶子、二人でいいんだよ!イケメンを集めるのはさぁ!
    それで、私と伶子がそれぞれ彼氏にしちゃえばいいんだよ!」
伶子 「伝手ないのに自信満々に言うよね」
志穂 「いいじゃない。合コンだったらそうするしかないんだし!」
伶子 「わかったよ、手伝えばいいんでしょ」
志穂 「ありがとう!じゃあ、早速イケメンを集めるためにイケメンに聞いてみよう!」
伶子 「ん?それってどういうこと?」
志穂 「だってさー、イケメンが思うイケメンってさー、その本人並みに、いや、もっとイケメンのはずじゃん?」
伶子 「はぁ」
志穂 「そこで、より良いイケメン様が私の前に降臨されちゃうっていうお手軽手段!私、超頭良い!」
伶子 「はぁー、頭良いね」
志穂 「でしょー!やばいっしょ!」
伶子 「……うんうん。じゃあ早速、イケメン様を呼び込むイケメンが来てるから声かけてみたらいいよ。(遠くへ)お兄さーん、注文!」
志穂 「はぁ!?え、ちょ、ちょっと待って!」

――さっきの店員が再びやってくる

伶子 「あ、お兄さん何度もごめんなさい。この子が用があるって言ってて」
志穂 「へっ、いや、その……。(ぶりっ子調子に)ご、合コンしたいんで、イケメン連れて来てくれませんかぁ!?」

――店員困った顔で、2番テーブルに呼ばれたんでと言いながら去っていく

志穂 「……あ、あが」
伶子 「………あ、終わったね」
志穂 「あああー!!私、こんなはずじゃあ、こんなはずじゃぁぁぁぁ!!違う!違うってぇぇぇぇ」
伶子 「ホントどんまい。元気出して、頭を冷やすために――」
志穂 「アイス!!」
伶子 「アイスコーヒーをあの店員さんにもう一度頼んでみようか、三度目の正直で」
志穂 「嫌だぁぁぁぁぁ!!!」

end of the story.

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