ろこもこゆーすふる〜美術部の日々〜

  第4話 悩める乙女/前編



new→《当台本を利用してくださってる方へ》




垣本 ゆりえ(かきもとゆりえ)女 高校3年生
明るく元気なスポーツ系天然娘。
中学時代は陸上部のキャプテンとして県内の大会を総なめにするほどの実力があったが
ひょんなことから美術部に入部したらしい。
第1話の部活動紹介で活動禁止になる原因をつくった張本人。


赤星 寛子(あかぼしひろこ)女 高校3年生
美術部部長。基本的には、真面目な姉さん気質。
某有名芸術大学を目指し勉学に奮闘中。
絵は天才的に上手いといえばそうだが、色彩センスだけは素人が見てもまるでない。


己ノ瀬 來(みのせらい)女 高校2年生
本校一の美人。
色沙汰でいつも何かしら悩みを抱えている。そのため部では絵を描きながらストレス発散をしている。
普段はクール(気だるい感じ)だが、感情が高ぶると部内限定で甘えん坊になる。
しかし、考えていることが常に斜め上ではある。


新垣 博哉(にいがきひろや)男 高校2年生
次期部長候補。見た目は爽やかな真面目な青年。
恐らく部で一番の常識人。しかし、女性陣の勢いに毎度負けている。
さらに、泉のテンションについていけず若干苦手意識がある。


喜戸 泉(きどいずみ)男 高校1年生
今年の新入生。パワフルで熱い青年。
本人は至って真剣なのだが、よく周りには変人扱いされる。
実はそれには彼の趣味に問題があるかららしい。
その趣味とは、被服(衣装デザイン)である。
理由が不可解だが、彼も第1話で入部を決めた。


奥 要(おくかなめ)男 27〜29歳くらい 教師
美術教師で美術部の顧問。
普段は涼しげな顔をしていて何を考えているのか分からないが
中身は完全なる熱血教師。
そして、話し出すと意外とおしゃべりで本人無自覚であるがナルシストでもある。
ちなみにボケもツッコミもでき、スルースキルが高い。


右京 朗(うきょうほがら)男 高校2年生
童顔で実年齢よりも幼く見られ、男扱いしてもらえないのが悩みの青年。
そのため、自分=女というキーワードにやたら敏感。
一度退部していたが、第3話で踏ん切りがつき再入部を果たした。
最初の台詞にとぶ


大辰 咲乃(おおたつさくの)女 高校1年生
今年の新入生。
どちらかというと内気でおっとりしており、背が小さい。
割と毒舌(正直)
第1話で入部を決めた。
※今回台詞がないため、出番なし






4:3:0若しくは3:3:1台本

<キャスト>
垣本 ゆりえ (♀):
赤星 寛子  (♀):
己ノ瀬 來   (♀):
新垣 博哉  (♂):
喜戸 泉    (♂):
奥 要    (♂):
右京 朗 (♂or不):










<前回までのあらすじ>

要ナレ 「1週間ほど活動禁止になっていたが、やっと上からの許しを得たことで活動を再開することができた美術部。
     部長を筆頭に目標も掲げ、改めてスタートが切れたようで、私は嬉しい。
     だが、何かと喜戸のやつが、部の雰囲気をかき乱しているのは気のせいなのだろうか…。
     まぁ、それはともかく、前回の話。
     美術部の技術面を上げようと赤星が技法講座を行なっていたらしい…
     そんな中、昨年退部したはずの[ほがら]が部室に戻ってきた。
     話を聞くとどうやら昔起きた事件から立ち直り、再入部を考えていたようだ。
     そこで、部員と私は快く受け入れ、また新たなる美術部を誕生させることができたのだった。
     ――まぁ、ここからが頑張りどころだがな。では、今回の話に行ってみるか」




◆放課後 美術部部室

「(ひそひそ声で)にーがきせんぱーい!」
博哉 「…ん?なに?」
「(ひそひそ声で)あれ見てくださいよ、あれ!なんか俺でも近寄れないんすけど!」
博哉 「……ああ、あれね。近寄れなくていいと思うよ」
「は、はい…」

――ゆりえ・寛子・來が同時に何かをつぶやいている

ゆりえ 「ろ、ロールケーキがぁ………!」
寛子 「こんな成績じゃ私……私……」
「(泣いている)もう嫌だよー……怖いよう……!」

「突っ伏しているゆりえ先輩はともかく、あの状態で描けている部長と、來先輩は最強ですね…!」
博哉 「…あの二人はいろんな意味で最強だからな。己ノ瀬の場合は最強に加え、最狂で最凶だし」
「さいきょうで、さいきょうで、さいきょう?…口頭だとよく分かんないです」
博哉 「まあ、分からなくていいよ。とりあえず、続き描かせて。
    …今いるメンバーで、ある意味真剣に描いているの大辰さんくらいだよ?」
咲乃 「…………」
「…………はっ!すみません!俺も描きます!」

――戸を開ける音

「お前たち、ちゃんとやってるかー」
博哉 「あ、お疲れ様です」
「先生お疲れ様でーす!」
「お疲れさん。おや?……あれは何だ?」
博哉 「……あー。俺にはよく分からないです。来てからずっとあの調子でした」
「……そうか」
「(ひそひそ声で)あれ、新垣先輩、何か勘付いてるんじゃないんですか?」
博哉 「(ひそひそ声で)…いや、あれは俺がどうこうする問題じゃないだろ」
「(ひそひそ声で)えー、先輩だけズルいですよ〜」
博哉 「(ひそひそ声で)……ズルくないから」
「………って、あれ?先生?」

――要が3人に近づく

「…おい、そこの3人。どうした?」
寛子 「………平面構成なんて……。って、先生!お疲れ様です!」
「………うーん。あっ、か――な――め――――――!!」
「……ふがっ。突然抱きつくな!びっくりするだろうが」
「あの、思ったんですけど……、やっぱり私……要がいいかも」
「……おいおい。來はまたあれか…」
「また……。あー!そうなんです!もうあの人が怖くて携帯持って来れなくて!…助けてよ要!」
「携帯は禁止じゃなかったか……?まあいい、とりあえず離してくれ(面倒くさいし)」
「…はぁーい」
「ところで、赤星は大丈夫か?かなり落ち込んでいたようだが」
寛子 「あ、はい……。ちょっと模試の判定が良くなくて……」
「…そうか。そういうことなら俺に相談しろ。経験者ほど参考になる意見はないからな。
   だから、気を取り直して作品に取り組めよ。そうしないと、良い作品ができないぞ?
   作品は感情に影響されるからな」
寛子 「そう…ですよね。ありがとうございます…」
「……それで、最後はおまえだな。さっきから反応がないが大丈夫か?」
ゆりえ 「………はぅ、要だ!」
「……おう。要だが、どうした?」
ゆりえ 「聞いてくださいよ〜!私のロールケーキが!
     最後のロールケーキが食べられちゃったんです!せっかく冷やしておいたのに〜」
「…それは、誰に?」
ゆりえ 「弟にです!」
「………それは仕方なくないか?おまえは姉なんだから、そこはおおめに見るべきだろ」
ゆりえ 「んー。そうなんですけど……あ、そっか!わかりました〜また買うことにしま〜す」
「(なぜ、始めにその考えに至らなかったんだ…)」

――戸を開ける音2

寛子 「――――要先生、福江先生が呼んでますよ」
「…お、そうだった。頼まれごとがあったな。…悩みも多いかもしれんが、頑張って取り組めよ?
   では、あとはよろしく。施錠の時には戻ってくるから」

――戸が閉まる音

「うーむ。まるで、美術部のヒーローですね…!事件をことごとく解決していくなんて!」
ゆりえ 「確かにヒーローかも?かっこいよね〜要!職員室行ったらなっかなか話せないもんね」
「んーかっこいいですけど、私の事件全く解決してくれなかったぁ」
ゆりえ 「う?事件って?」
「携帯不携帯事件ですよう…」
ゆりえ 「ふけいたい事件?なんじゃそりゃ〜」
寛子 「携帯不携帯事件って…それは來のせいじゃないの?」
「…私のせいじゃないですよう。久野[くの]くんのせいですよぉ」
寛子 「久野?ああ、生徒会の期待の星とか言われてる人?」
「そうなんですよ〜最初は普通にやりとりしてたんですけど、最近、毎日毎日メールと電話攻撃されるんです〜!
   それで嫌になって途中でシカトしたら、留守電に『俺のこと捨てるのか』みたいな声が1分くらい入ってるんです〜。
   もうそれが怖くて…」
ゆりえ 「ほえー!それじゃ携帯持ち歩きたくないねえ」
寛子 「それは確かに怖いわ……」
「おお、モテる女性は大変だ…!」
博哉 「―――己ノ瀬、それなら着信拒否とかにすればいいじゃないか」
「……それがぁ、着信拒否してもなぜかかかってくるし
   アドレス変更しても何事もなかったかのように送ってくるんだよぉ…」
博哉 「割としつこいみたいだな。電話はとりあえず留守電が記録されないようにして
    取らないようにするしかないな。…ただ、問題はメールの方だよな」
「ん、拒否して変更しても無理なんですか!?」
寛子 「そうみたいね…」
「むむむ、強敵ですね!ここは勇者が立ち上がるしかないですねー!」
ゆりえ 「だよー!…あー、喜戸っちが立ち上がるんだ〜?」
「ちーがいますって!ここはそう、さっきのヒーローみたいな要先生に――」

――ドアが開く音3

「ギャ――――――!!でしゃばって"すみばせん"先生ぃ――――!!」
「………ひゃ!な、なんだ!?」
「ぬわわわ!すみません!先生かとー!」
「………え、何、先生怖がってるの」
「あ、なんでもないです〜はい〜」
「そっか。あ、お疲れ様ですー」
ゆりえ 「ほがらん、おっつ〜!」
博哉 「ん、お疲れ」
寛子 「朗くんお疲れー。あれ、今日バイトは?」
「それが店長が体調崩しちゃって、お店自体、お休みになってしまったので…」
寛子 「そっか〜…」
「…それにしても、この空気は何ですか?」
寛子 「見てもらえば多分わかると思うんだけど…」
「來かー。どうしたの、目が腫れてないってことは失恋ではなさそうだけど」
「あ〜朗、聞いてよ〜。久野くんのメール攻撃がひどくて、しつこいを超えて怖くなってきたところなんだよう…!」
「…久野?ああ、今度はあいつなんだ?どう問題起こしたのか見当もつかないんだけど」
ゆりえ 「なんかね〜、『かくかくしかじか』ってことになってるんだって〜」
「はっ?ちょっと僕でもそれは……ん?ちょっと待ってください……」
寛子 「あー…何かアドバイスあるなら、言ってあげて」
「……そーぅですよ!來先輩のために勇者になってください!」
「…………」
ゆりえ 「勇者かぁ、ほがらんが勇者ってなんだか面白いなぁ〜」
「…………………あっ!」
ゆりえ寛子博哉 「!?」
「僕さ……あいつ、久野に何度か來のアドレス教えたんだよな……」
寛子 「え―――!?」
「ななな…なんですと!?」
ゆりえ 「あれ〜?ってことは、なんだろ〜?」
博哉 「つまり、親切にも朗がアドレスを教えていたのが原因の1つだったってことか…」
「まさか身近なところにスパイが…!いやぁ、世の中怖くなりましたねぇ」
「朗ぁ〜!何やってるんだよお…!
   おかげで私、毎日怖くて怖くて、まともな学校生活送れてなかったんだよー…」
「……ほんとーにごめん!まさかそんな裏事情があるだなんて思わないし…。
   確かに3回以上聞かれたときには、さすがに変だとは思ったけど……」
「変だと思ったんならやめてくれたら良かったのにぃ…」
「ごめん…」
ゆりえ 「ありゃーそういうことかぁ。ほがらん親切な子だから教えちゃうもんねえ」
博哉 「…いや、そうじゃなくて、単純に気づかなかっただけでしょう」
寛子 「うーん…。そうだとしても、朗くんにしては鈍感すぎる気がするんだけど、なんで変だと思ったのに何度も教えたの?」
「えーっと…、1回目は携帯が古くて故障したから教えてくれって言われて
   2回目は携帯が水没、3回目は携帯を無くした。
   そんな感じでずっと聞かれて4回目にはどう考えてもおかしいと思ったんで
   そんなに携帯壊したりするなら、アドレスちゃんと控えておけって言ったんです」
寛子 「それで?」
「そしたら、『めんどくさがるなよ、"男"として生きてるなら細かいこと考えんな』って
   言われたんで……それも…そうかなぁ……って」
寛子 「……あー、それは……」
博哉 「(完全に[]められたな……)」
「……んーむ」
ゆりえ 「……ほえ?」
「………むー…」
「え?ちょ、ちょっと、そんな顔で見ないでくださいよ……別に、そ、その言葉で納得した訳ではなくて……!」
「はい、朗先輩、わかってますって!ね、ゆりえ先輩?」
ゆりえ 「う?そだねー、ほがらんは可愛いからいいと思うなぁ」
「かっ、可愛いとかじゃなくてですね……。とにかく…ごめんとしか……」
「(壮大なため息)なんだろう…。怒ろうにも怒れない……」
寛子 「…そうね。この場合どうしようもなかったとしか、言いようがないもんね。でもとりあえずは、1つ問題は解決ね」
博哉 「あとは電話か…。電話なら、もう番号を変えるくらいしか方法なくないか?」
「うーん、番号は変えたくないよ〜…。中3からずっと使ってて覚えてるし」
博哉 「でも、そこは仕方ないだろ…」
「そーですよ〜!來先輩の身を守るにはそうするしかないのです!
   だから、ここはズバッと変えちゃいましょー!」
「うーん………」

――物凄い音がする

「うわぁっ!」
寛子 「な、何の音??」
「…こ、これは!ゆりえ先輩!ど、ドアを!」
ゆりえ 「あいあいさー!……とりゃっ」

――鍵を閉めるのと変わらないタイミングで再度物凄い音がする

博哉 「…これ、いったい何の音だ。というか、誰がこんなこと……」
ゆりえ 「…ふぅぅ。な、なんかいたよ!」
「……これは、もしかして。………っておい!いたぞ、あいつ!」
「久野くんだぁぁぁぁ!もうやだぁ――――――――!」
寛子 「…何かすごい顔してこっち見てるんだけど…、あれ本当に久野くん?」
「見たくないよ〜…!私知らないよ〜あんなの〜!」
寛子 「ちょ、ちょっと來、大丈夫?」
「だ、大丈夫……あ、いや、ではない…です…ぅぅ」
博哉 「…完全にパニック状態に陥ってますね」
ゆりえ 「來ちゃんしっかりぃ〜!」
「うぅ…やっぱりこれって僕のせいか……。どうにかしてあげないといけないよ…な?」
博哉 「あー…いや、どうにかするっていったってどうしようもないだろ、この状況…。
    今、朗が出ていっても悪化するだけだぞ、きっと」
「そして、むしろ、朗先輩が襲われる可能性が……!」
「はぁ!?何言ってるんだよ。來と一緒にするなぁ」
「あ、いや、そういう意味で言ったわけじゃないです!本当にそういう意味では……!」
寛子 「ええっと、二人とも少しだけ静かにして。…ここは、こちらからあまり動くべきじゃないと思うの」
「でも部長…、このままだと夜まで帰れないと…」
「これは…夜どころか、明日まで帰れないのでは!?」
博哉 「……なんだか本当にそうなってしまいそうだから、やめてくれ」
「……」
ゆりえ 「うーん。それじゃあどうしよっかぁ〜。そだっ、私が來ちゃん担いで強行突破してもいいかなぁ」
寛子博哉 「それはやめて(ください)」
ゆりえ 「えー、ダメなんだぁ…担げないことはないと思うんだけどなぁ…」
寛子 「ダメも何も、あんた自身の身の危険も考えなさいよ…。
    向こうは気が動転していて何しでかすか分かんないのよ?」
ゆりえ 「でも、寛子〜。久野くんって人。來ちゃんに会いたくて来てるんだよね?」
寛子 「…多分…そうだけど?」
ゆりえ 「んーと、それだったら、会わせるだけ会わせてあげたらいいと思うんだぁ」
寛子 「え、ちょっと…ゆりえ何考えてるの?」
ゆりえ 「ええっとねぇ……」
「ゆ、ゆりえ先輩……、それだと美術部が赤い絵の具まみれに…!
   なーんてことが、起こってしまうかもですよ…?」
寛子博哉 「………………」
「それ、上手く言ったつもりかよ」
「あーはー、"チヨっと"だけ滑っちゃった感じですかねー、ははははは…」
ゆりえ 「いやぁ、喜戸っちは面白いけど、全然ついていけないやぁ」
博哉 「それで、ゆりえ先輩。なんで会わせようなんてことを……」
ゆりえ 「んー。確かに來ちゃんのことを考えると、危ないなぁって思うんだけど
     その久野くんって子を落ち着かせるなら、やっぱし会って話をした方が良いんじゃないのかなぁって」
博哉 「なるほど…」

――物凄い音、みたび。ゆっくりドアが開く

ゆりえ 「あり?開いちゃったねー…?」
「…ひっ」
寛子 「……え」
博哉 「……なっ」
「ぎゃぁ――――――――――――――!!」



To be continued.

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